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十五話 錬金術なんだろうか?

「わぁぁぁ、大きな庭ですね!」


 門を開け中に入った瞬間走り回るサーシャ。

 彼女は既に宿を手放していた。

 元々私物があった訳でもないのですぐに諸々は終わったらしい。


「あんまりはしゃいで転けるなよ?」

「大丈夫ですよー!わーっ!」


 言ってる傍から池に落ちていた。

 間抜けなものだ。


「冷たいですー」


 近寄るとガチガチと体を震わせながら水の中から出てきた。

 幸い何もいない池だ。


「ここに何か飼いたいね」


 ルーナは何もいないのが寂しいのかそんなことを言っている。


「ま、それはまた今度だな」


 とりあえずは家の中を見て回ろう。




 適当に見て確認を終えた後はリビングに集まった。

 生活に必要な最低限のものは備え付けられてあったので特に必要なものは無いだろう。

 そこでこれからについて話し合うことにした。


「とりあえずシュノーレでの地位の獲得については成功した」


 今までのことを思えば大躍進だ。

 汚いゴミ部屋に1人閉じこもって日々観察力だけを鍛えていた頃とは違う。


「そういえばエースは何か目的みたいなものあるのですか?地位が必要みたいな言い方しましたけど」

「ルーナには話してあるが2人にも話しておこうか」


 シエルの言葉を聞いて全部話すことにする。



「ってな訳だ。俺はその計画を止めたいと思っている。だからこそ、こうして一応の地位は欲しかった。俺の言葉を信用してもらえるように王の近くにいられるように。デッドエンドを倒しただけでここまでスムーズに運ぶとは思わなかったがな」


 全部説明した。

 俺が若返ったこと。

 そしてルクスブルクの子だったことを。


「エース様は貴族の生まれだったのですか?」


 頷く。


「で、その当主の計画を知り俺はそれを阻止するために抜け出した。今もあいつは俺のことを探しているだろう」

「王に話さなくていいのですか?」


 シエルの質問に首を横に振る。


「まだやめておいた方がいいだろうな」

「どうして?」


 ルーナの顔を見る。


「ルクスブルクの力は絶対だ。ルシフェルスと並んで騎士を排出した名門としての名は伊達ではない」


 昔から剣の名門と言われているのはルクスブルクとルシフェルスのこの2つだ。

 だからこそ今ここで下手に嗅ぎ回って尻尾を掴まれるのは避けたい。

 逆上したルクスブルクが何をするかが分からない


「それに、俺の知る限りではルクスブルクの後ろにはとある貴族が付いている可能性がある。そいつの正体を突き止めたい」


 あの時に見た菫色の髪の貴族だ。

 あいつの正体は掴んでおきたい。

 ルクスブルクと手を組んでいるかは定かではないが何らかの繋がりはあるはずだし。


「そんな存在がいるのだから今王に話すのは不味いだろう」


 そんな会話をしていた時だった。


「クルッポッポー」

「鳩か」


 窓をコツコツ叩く音と鳴き声。

 そちらを見ると伝書鳩だ。

 窓を開け迎え入れるとその手紙を手に取る。

 王様からだ。

 

「何が書かれてあるんですか?」

「明日早速会議が行われるらしい。俺を呼ぶか迷ったが来て欲しい、とさ」


 好都合だ。


「行くのですか?」

「当然。行かなくてはこの王国の現状が分からないしな」

「お気を付けてくださいね?エース様」

「あぁ。気をつける」


 答えながら椅子に座ると紙とペンをルーナに持ってきてもらうと返事を書き始めた。


「よし」


 さっきここに飛んできた鳩の足に返事を括り付けると空へと離す。

 これで俺の言葉を届けてくれるだろう。

 そうしてから3人を見回す。


「俺は明日に備えてそろそろ寝るがみんなはどうする?」

「あの、1ついいですか?直ぐに終わる話だと思うので」


 しかしシエルが俺を呼び止める。


「どうしたんだ?」

「若返りの薬について聞きたいのですが、何処で手に入れたのですか?」

「いや、作った」


 そう答えると皆は驚いた。


「な、何?どうしたんだ?」

「それ錬金術じゃないんですか?エース様」

「いや、違うと思うがどうなんだろうな」


 自分ではただの調合の範囲だと思っている。


「でもエースは凄いから今更錬金術ができたとしても不思議じゃないよね」


 にっこりと笑うルーナ。


「聞きたいのはそれだけか?」

「はい」


 しかし、そうだな。

 俺も聞き損じていたことがあったかもしれない。

 サーシャに目をやる。


「サーシャは俺といてくれると言ったが親は心配しないのか?」

「両親は死の森で何年も前に亡くなってしまってからそれから1人です」

「あ、その悪いな」


 要らないことを聞いてしまったかもしれない。


「いえいえ!気にしないでください!私ももう大丈夫ですから!それからですね、何とか経営してた宿も誰も利用してくれなくて、だからエース様が来てくれた時は本当に嬉しかったんです」


 両手の人差し指を当ててもじもじする彼女。

 それからにっこりと笑う彼女の顔は見とれそうになった。


「私は本当にエース様の事が好きなんですよ?優しくて、たまに変態的な目で見てくることもあるけど、それでも凄く好きです」

「そうか。好きになってくれてありがとうな」


 何だか恥ずかしくなってきたな。


「悪い。もう寝る。後は好きにしてくれ」


 だからその照れを隠すように俺は寝床へと直行することにした。



 次の日俺は王城へと足を運んでいた。

 後ろには3人を連れている。


「ルシフェルス様に敬礼!」


 俺が登城するために門を訪れたら先日世話になった門兵までもが俺に敬礼していた。

 しかも全員ビシッと動きを揃えてしてくれている。

 おいおい、貴族というのはこんなにも凄いのだな。


「何だか王様になった気分だね」

「確かにな。ここまでの対応をされると俺も少しはそんな風に感じている」


 それにしても俺達の服装は明らかに浮いていた。


「別に私服で構わないと言ってはいたが今度からはちゃんとした服で来た方がいいかもしれないな」

「たしかに、そうかもですね」


 苦笑いを浮かべるシエル。


「でも、エース様はどんな服装でも似合うので平気ですよ」


 訳の分からないフォローを入れてくれるサーシャ。


「ありがとうな」


 とりあえず礼を言ってから坂を登る。

 そうして暫く丘の上に立つ王城が見える庭園までやってこられた。

 先日ペルセウスと御前試合を行った場所、そこには


「先日の御無礼をお許し下さい。ルシフェルス様お待ちしておりました」


 俺を見るなり片膝を付くペルセウスの姿があった。


「………いや、いい。気にするな」


 正直な話何が起きたのか分からなかった。

 あの団長のペルセウスが俺に跪いているのだから。


「武器を有していながらの完全なる敗北。俺は貴方に心を打たれました。どうか懺悔をさせて下さい。貴方に剣を向けてしまったのは我が人生最大の汚点と心得ております。申し訳ございません」

「そこまで言うのなら好きにしてくれ」


 そう言うと奴は頭を擦り付けて俺に謝罪をした。何度もだ。そしていい加減顔を上げろと言ったところ やっと上げた。


「ここにいるということは案内してくれるのだろう?」

「はい。こちらへ」


 王城を案内してくれるらしい。

 いよいよだな。

 俺は貴族を相手にうまくやれるだろうか。

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