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十四話 求婚されました

 一仕事終えて宿に戻ってきた俺達。

 シエルの親父さんがシエルを任せると言ってくれたので死の森攻略後は一緒に暮らすことになったのはいいのだが。

 それにしても


「男1人に女3人というのは何ともな」

「そうなの?」


 ルーナに俺の気持ちは分からないと思う。

 なんせ俺は男で彼女は女だ。


「私はエース様といるなら何時でも何処でも居心地が宜しいです」


 壁に背を預けて座っている俺の横に寄り添ってくるサーシャ。


「うん、目のやり場に困るっていうか、何だろうな」


 今だってそうだった。

 サーシャに目をやりにくい。

 

「もっと、見ていいんですよ?エース様になら………」

「止めろ。刺激が強い」


 サーシャから視線を外した左側には


「おわっ!」

「何その驚き方。私もエースの横にいたかっただけだから」


 赤い顔でモジモジとしているルーナの姿があった。

 落ち着かずに前を向くと


「エースのそばに居ると安心できます」


 何故か俺の太ももの上に膝を抱えて座るシエル。

 何だこれは。

 俺を殺す気か?

 ドクドクと心臓が脈動して死にそうだ。


「私、こんなにも胸がときめいたこと今までありませんよ。エース様、結婚してくれませんか?私はあの時助けられた瞬間に恋をしちゃったみたいです」


 と、サーシャが赤くした顔で口にしていた。


「私も。エースは命の恩人だし、好きになっちゃったのかも」

「私もです。自分の意見を貫くことの大切さ。貴方に教えてもらいましたし、私を助けてくれたエース凄くかっこよかったです」


 何故か流れに乗ったのかルーナとシエルまで凄まじいことを言ってきた。


「えぇ?!!!」

「私と結婚してくれませんか?エース様。この体も心も全部エース様に捧げたいです」

「ちょっとエースと結婚するのは私だから」

「いえ、私ですよ」


 困惑している俺を置いて3人は俺を取り合い始めた。


「あなた達は私とエース様の幸せな結婚生活を傍から眺める権利をあげます」

「それをあげるのは私だから」

「違いますそれをあげるのは私ですから」


 バチバチな視線同士が交差しあっている。

 思わず怯みそうになるほどだったが何とか口を挟んだ。


「………とりあえず喧嘩するのは止めてくれないか?」


 幸い一夫多妻制とやらは認められているわけだし。


「分かったよ。こんな俺を好きだって言ってくれるなら結婚しちゃうか?」


 そうやって提案した瞬間三人の顔にはものすごい笑顔が浮かんだ。


「いいのですか?」

「そもそも頼んできたのはサーシャだろ?俺はそれに頷いた。問題ない」

「私とも結婚してくれるの?」

「ルーナもしたいって言っただろ」


 だからもういっそのことしちゃおうか?という話にしたのだが。


「私もいいのですか?」

「勿論。シエルだけ仲間はずれなんて出来るわけないしな」


 そう口にして頭を撫でると表情が更に柔らかくなった。


「って訳だ。もうそろそろ眠たいんで寝てもいいだろうか?」


 欠伸が出てきた。

 細かい話はまた今度にすればいいだろう。


「うん。おやすみ」

「おやすみなさい」

「エース様私の夢見て下さいね?」


 サーシャは夢の中までついてくるらしい。

 それよりもう寝ることにしようか。



 次の日王城へとやってきていた。

 理由はそうだったな、王様に呼ばれたから。


「よく来たな」

「よく来てやった」

「前から気になっていたが相変わらずその口は直らないようだな」

「気に触ったのなら謝ろう。生憎学がなくて敬語は使えなくてね」


 苦笑いを浮かべる王様にそう答える。

 敬語はややこしくて苦手なのだ。


「それで、今日は何の用なんだ?」

「いや、何。エースのおかげで不正を行っていた鑑定士達の摘発が完了したのでね。その礼を、と思ってね」

「礼?俺はこのカードだけでも十分だが」

「まぁ、そう言うな。そして改めて名乗っておこう。俺の名はシド」


 そう言って立ち上がる王様。

 昨日から思っていたが随分と若い王様だな。

 まだ20もいっていないくらいだろう。


「聞くところによるとお前には家名がないと聞く。それを送ろうと思ってね。ルシフェルス、どうだろうか?」

「ルシフェルスを?」


 聞いたことがあるぞ。

 家名ルシフェルス。

 たしかルクスブルクと同じく剣の名門に送られる貴族の家名だ。


「つい、先日先代のルシフェルスが降りたのでその補充という訳でもないが。君に良ければ送ろうと思う」

「いいのか?余所者だぞ俺は」

「既に宮廷鑑定士の称号を送った後だ。今更だろう。それに、この国から暫くは出るつもりはないのだろう?」


 その言葉に頷く。

 ここは居心地がいい。

 俺を俺だと認めてくれて俺の能力を思う存分に使える場所。

 少なくともあの家で過ごした日々よりはマシだ。


「あぁ。なら有難く貰おうかな」

「だが1つ約束してもらえるか?ルシフェルスは王の剣だ。貴族となりこのシュノーレに尽くしてもらうという事になる。定例の貴族会議に出てもらうことにもなる」

「構わない」


 それに貴族になれるのなら都合のいい話でもある。

 俺の地位は更に保証されるわけだし。

 色々な情報に手を伸ばせるはずだ。


「感謝しよう。英雄よ」


 そう言い横に置いてあった剣をこちらへ持ってくるシド。


恩賜(おんし)の剣だ。受け取れ。これはお前を俺が認めたという証に他ならない」

「分かった」


 頷き受け取る。


「家はあるのか?」

「ない。今は宿を借りている」

「そうか。なら貴族街の家でも買ってくれるか?ここから遠くては都合も悪いだろう?」

「分かった」

「用事があれば都度こちらから連絡するがそれ以外は自由に動いてもらっても構わん。それと住所が決まったら連絡してくれ。兵士共に話は通してある。直ぐに通されるだろう」


 その言葉を聞いてとりあえずシドとは別れることにした。

 さて、家を探さなくてはな。



 そうして家を探すために貴族街を歩いていた。

 どれにしようか。

 お金は王様に貰ったから足りるのだが、中々これというものが見つからない。


「これとかどうですか?私とエース様のいちゃらぶ生活を始めるのにぴったりなんですけど!」


 サーシャが1つの家を指さしていた。

 それにしてもどういう基準でそう思ったのだろうか。


「たしかにこれいいね。私とエースのラブラブ生活によさそう」


 一応はそれに同意するルーナ。

 その家を見てみるが確かにいいかもしれない。


「王城からも近いのでいいですねこれは。私とエースの素敵な生活にぴったりですね」


 こちらも一応だがシエルも同意らしい。

 なら満場一致だな。


「よし、これにしようか」

「これでいいのか?」

「これでいい」


 一緒についてきたシルバにそう告げる。

 表情を顔に出さなさそうな人だが今だけは苦笑いしていた。

 どうしたのだろうか。

 でもまぁいいか。


「後は手続きをしておいてくれ」

「分かった」


 彼に金を渡す。

 あとはシルバがしてくれるらしいので鍵を受け取るとそのまま中に入ることにした。


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