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一話 嫌われているし逃走します

修正内容は主人公のこれまでの風呂事情の追加と全体にスペースの挿入です。

 とある日の朝起きたら俺は若返っていた。


「おいおいおい………」


 寝ぼけていて自分でも何が起きているのか分からないし、何を言っているのか分からない。

 俺、エースは25歳のダメ人間じゃなかっただろうか?


 それが何だ。朝起きたら見た目10代後半くらいだろうか、まで若返っているなんて。

 それで昨日何をしたか思い出す。


 そうだ。自分で作った若返る薬を飲んだな。

 そんなことを思い出していたら俺の部屋に向かってくる足音が聞こえた。


「おい!エース!いつまで寝てるつもりだ!」

「ちょっとやばいな………」


 この声は………親父だ。

 俺をぶん殴りに来るはずだ。だがこの姿で見つかるのは面倒だ。

 そこでいつか使うと思って用意していた置き手紙を急いで机に叩きつけるように置く。


 そこには旅に出る旨の文を書いてある。

 時間稼ぎには……ならないかもしれない。苦笑する。


 それから急いで何処から逃げようか周りを見回した。

 まさか本当に若返るなんて思っていなかったからこの先はノープランだ。


「窓………」


 ここは二階。

 降りるというより落ちることになるし、その結果どうなるかは分からない。

 でもやるしかないんだよな……。

 震える足を何とか止めて前を見る。


「!」


 そうして飛び降りようとしたがやはり足は竦む。


「おい!エース!聞こえてんのか?!」


 親父がその足を踏み鳴らす音はもうすぐにそこまで迫っているのにだ。

 でも逆にそれで意を決することができた。


「!!」


 声も出さずに手すりを乗り越えて窓から飛び出る。

 何とか着地した時の音を消して近くにあった岩の陰に隠れた。


「はぁ………つぅ………」


 小さく呻く。

 流石に二階から落ちれば痛んだがそれ以上のものは無い。

 骨も折れてはいないみたいだし平気だろう。


「おい、エースどこいった?!」


 扉を開ける音と共に親父の声が窓の開いた部屋から聞こえる。

 とりあえず開いている窓を見に来たようで岩の陰から親父の顔を見た。

 相変わらず人を殺しそうなやばい目だ。


 今日こそ俺を殺しに来ていたのかもしれない。

 家名を汚した俺を始末しに来たのかもしれない。

 俺は生まれてからずっと家の名前に泥を塗り続けてきた。

 理由は簡単だ。剣の名門なのに俺が剣を使えないから。


「ルクスブルク卿。そのエースという者はここにはいないようだが」

「申し訳ございません。必ずや探し出してあの愚息を始末いたしますので」


 どうやら想像は当たっていたらしい。

 誰かと話す声が聞こえる。

 いい加減堪忍袋の緒もキレかけていたのかもしれない。


「いやいや、ルクスブルク卿の心労も理解している。それにこの置き手紙には修行に出るとある。もしかしたらその力を磨いて帰ってくるやもしれぬぞ?」

「あいつに限って、それは」


 ハンニバル・ルクスブルク、俺の親父と話すもう1人の男の姿がその時目に入った。


「………」


 息を殺してその男を見る。

 赤いマントを羽織り菫色の髪を肩まで伸ばした壮年の男だ。


「必ずやあの愚息、いえエースを見つけ出して始末しますので」

「実の息子であろう?そこまで血眼にならずとも良いのではないか?」

「いえ、あの役立たずは家名に泥を塗るだけ塗って、修行に出る等とこんなことを言い出したのです。必ずや」


 遠目にもその目が本気であることを伺わせる。

 それを見てから黙って懐から瓶を取り出すと足に叩きつけて割った。


 音は出ないので気付かれることもないだろう。

 それに飛び散った破片が体を傷つけることも無い。


 傷んだ体が回復した。

 回復薬だ。


「さて、逃亡でも始めますか」


 逃げるのだけは得意だ。

 逃げるのだけはこの人生で上手くなった。

 思えば逃げてばかりの人生。


「でも、もう逃げるのは辞める」


 これを最後の逃げにしたい。

 そういう気持ちだけはあった。


「全部やり直すんだ」


 目はしっかりと雑木林に向けた。

 背後からの声はもう聞こえない。

 奴らは昔の俺を探しにいったのだろう。


「何処までも逃げてやるさ」


 雑木林へと俺の足は向かっていく。

 とりあえずこの先に辿り着こう。



 雑木林に入って暫く経った頃だった。

 ここまで追ってはこないだろうと休み休み歩いていたのが悪手だった。

 後ろを見ると想像通りの景色があった。


「追えー!追えー!絶対に逃がすな!逃がせば殺す!何があってもあの無礼者を殺せ!奴は反逆者!犯罪者なのだ!生かしておく理由はない!」


 親父、いやハンニバルが俺を追ってきているようだ。

 しかもご丁寧に私兵を使っている。

 その様子はまるで1匹のスライムを倒すのにSランクの武器や防具、アイテムを使っているような間抜けさだ。

 しかしそれだけ本気を出されては俺にとっては不味い。


「ちょっとやばいかな………」


 1番やばいのはあれだ。


「クンクン」


 犬だ。しかも匂いを辿るのに最適に作られた犬。

 あれも動員して俺を探している。


「いいか?!この匂いを探すんだ!」

「ワン!ワン!」


 犬が俺のいる方に向かって吠えた。

 不味い?!バレたか?!


 流石に犬からは逃げられる気がしない。

 どうしようか頭をフル回転させる。


「こんなところにいたのか!」

「な、何だよ!」


 しかしそれも意味はなさなかったかもしれない。

 ついにバレてしまったか。

 岩陰を回り込んで見てきたハンニバルは俺を見て口を開こうとした。


「貴様を………」


 しかし声は続かなかった。

 俺もどうしようかと思っていた時に親父は訳の分からなさそうな顔をした。


「本当にここでいいのか?」

「ワン!ワン!」


 俺に噛み付いてこようとする犬を咎めるハンニバル。


「待て。あの犯罪者はこのような若い人間ではない」


 その言葉を聞いて思い出した。俺は今若いということに。

 だが、それで逃げられるかどうかもまた怪しいかもしれない。

 だって服は逃げる前から変えていないのだから匂いは辿られる。

 どうごまかすか……。


「君、聞きたいことがあるのだが」


 馬から降りて俺の前に立つ親父。

 駆け引きの始まりだ。

 ここで選択を誤れば俺がどうなるかは分からない。

 慎重に選ばなくては。


「何さ」

「君の着ている服は私の愚息のもののはずだが、どういうことだ?」

「身ぐるみ剥がされて歩いてたら変なおっさんがくれたんだよ。自分にはいらないものだからって」

「あいつ………こんな小さな子に罪を被せようとしたのか?もう許してはおけん。だから昨日は風呂に入ったのか。匂いを消すために」


 まぁ毎日も風呂に入っていなかったのは確かだが、別にそういう意味で入った訳ではなく、単純に古い自分とはお別れするために入ったんだがな。

 思わぬ効果があったらしい。


 馬にまた乗る親父。

 それにしても俺だと気付いていないらしい。

 好都合だ。


 だがそれも無理もないかもしれない。

 まだ若返りの技術は確立していないこと。

 その常識から考えて無意識の内に俺がエースだという考えは毛頭ないように思える。


「そのおっさんがどちらに向かったか分かるか?」

「あっちに向かってったよ。全裸で爆走してるから直ぐに分かると思う」


 俺の進もうとしている方とは違う方角を指さす。


「協力感謝する。私はルクスブルク家の当主だ。これを」


 そう言って馬上の上から剣を渡してきた。


「私が保護できれば最善なのだがどうだろうか」

「いや、向かうところがある。これはその道中」


 冗談じゃないぞ。

 それだけは勘弁してほしいな。


「情報提供感謝する。そら!」


 ハンニバルが馬を叩き走らせる。

 とにかく危機は脱したか。

 俺も出口に向かおう。


もう一話更新予定です。

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