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エピソード3

信は母親に呼ばれ、家族へ他県へと引っ越すことを知らされる。そのことを二人に告げようと決め、眠りについた。

信はずっと引っ越しのことを、安楽田と海に告げるタイミングを計っていた。

「おい、信。昨日は寝落ちか?」

終業後、靴箱へ向かう途中、安楽田が口にした。

昨夜は安楽田と海の二人でゲームしていたみたいだ。

「おーい、信くーん??」

なにも答えない信に、安楽田はからかい気味に聞いた。

「バイトが忙しかったんだろ?」

海は信にも事情がある、という感じに言う。

「うん・・・。」

信は思案した様子でこう答えた。

「そっか。まあ、仕方ないよなー。でも、今夜はプレイヤーイベントの日だから。

お前楽しみにしてたろ?絶対ゲームしろよ?」

そう言う安楽田の言葉も、信には感心ない様子で信は頷いて見せるだけだった。


その日も3人皆、バイト現場に向かうためそれぞれ違う方角へと足を伸ばしていた。

海も1人でバイトさきへと向かっている。ゲームをしている海の携帯電話に

チャット通知が届いた。

「ありゃ恋だな。」

安楽田からだった。どうやら信のことをいっているみたいだ。

「さー、どうだろう?」

海はいつものように関心なさげに返しす。

「なんにせよ、なんかあるな。」

すかさず安楽田から返事が来た。

「うん、まあそれはわかる。」と海は返した。


結局その日の夜も、信はゲームに姿を見せなかった。


翌朝、1限目の授業が終わった時だった。信の元に安楽田がやってきた。

「お、いたいた。お前どうしたの?具合でも悪いの?」

安楽田は右から左からと座って本を読む信の顔を覗き込む。

特に具合が悪いといった様子ではなさそうだが、なにか覇気のなさを漂わせている。

「安楽田、つぎ時間あるのいつ?」

「いつだっけ?」

安楽田はそう言って携帯電話でスケジュールを確認した。

「今日、バイトないみたい。」

「じゃあ、午後あけといて。」

信はそう言うと携帯電話をとりだし、別のクラスの海にチャットを打ちはじめた。

どうやら海も午後はバイトがないらしかった。

海にも信は会う約束を取り付けた。


全ての授業の終わりを告げるチャイムが、校内に鳴り響いた。

信が帰る準備を済ませ、クラスをでるときには既に二人は合流し廊下で待っていた。

ファミレスに足を運んでいる最中も、安楽田は昨日のゲームの話をしている。

海はというと、携帯電話のゲームに夢中のようだ。

ファミレスにつき、中にはいると適当なあいた席をみつけ、3人は腰かけた。

ソフトドリンクの飲み放題メニューを注文し、席をたち指定の場所でジュースを注ぐ。

再び席に戻りそれぞれジュースを口にした。

「それで、お前なんか悩みあるんだろ?」

安楽田は口に氷を含んで切り出した。氷のせいで頬がすこし膨らんでいる。

「悩みっていうかね。なんていうか、おれさ。その、引っ越すことになってさ・・・。」

信はそのことを告げると、指で頭を掻くしぐさをとった。

「どこに?」安楽田が追及する。

「OO県。」信が答えた。

安楽田はそれを聞いてもピンとこないみたいで、腕をくんで口をへの字に結んでみせた。

「OO地方だね。」

と、見かねた海が言う。

「OOかー。また、遠いな。」安楽田が言った。

安楽田のいうように、3人の住む地域から信の引っ越し予定先までは新幹線でも7時間以上を要した。

「まあ、でも行けない距離じゃないな。」

安楽田はそう言って、海にも同調を求めた。海も頷きそれに答えた。

「じゃあ、決まりだな。夏休みはOO県に旅行だ!」

安楽田がそう言って親指を立てる。

信は再び指で頭を掻いてみせ、少しはにかんだ表情を浮かべた。

海はジュースに入れたストローを口に運んでいる。

その半透明のジュースの中を

窓から差し込む夕暮れの赤が入り込み、ほんのりとオレンジ色に染まっていた。








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