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偽りのワールドブレイカー  作者: 宵月渚
第二章『三度目の正直』
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第9話『渡し物-2』

 クダリは渡されるものが何かわかっていたため、早歩きで研究室である小部屋に入る。


「もしかして、例の物ですか?」


「ああ、その例の物だよ」


 博士が小部屋の真ん中に置かれた宝箱を開ける。中にはハンドガンと鞘に納められた剣が入っている。


「こんなの作ったことないから上手くできたかは保証できないが、使ってみてくれ。一応、その銃っていうものの練習がしたかったら向こうに的を用意しているからそこに撃ってくれ。また随時増やしていくと思うが、今現在の弾薬は六発しか作っていないから慎重に使ってくれ」


 キリアから渡された銃と剣を腰にかける。


 まずは剣の方を使ってみる。硬い革の鞘から剣を抜く。剣は両刃で、初めて作られたと思えないほど完成度が高い。磨かれた刀身が部屋の光に反射して輝く。さすがに、部屋には道具が置かれていて、大きく振り回すことはできないが、一振りして鞘にしまう。振ってみた感想としては素材が鉄に似た素材なので多少は重いが振るのが苦にはならない。


「ふむ……」


 剣を鞘にしまい、銃を手に取る。銃の方も、剣と同じ素材で出来ているため少々重い。ロックがかけられていたので、ロックを外し、弾薬を確認し、宝箱があった方向の壁に数か所撃った後が残っているダーツの的のようなものがあったのでハンドガンを片手で構える。トリガーを引く。すると、狙った方向とは多少のブレがあったが、撃った場所に煙が上がる。ほとんど目で追えない速度で気付いたら的に弾が当たっていたという感じだ。


「おお……!」


「どうだ、すごいだろう。どうやって弾を発射しようかと悩んだが、炎魔法を使うことで発射速度を大幅に上げることに成功したんだ」


「へえ、しっかし、博士はすごいよな。俺の渡したでたらめな設計図でここまでつくりあげるなんて」


 二年前、入学してきたときに魔法が使えないことがすぐに判明して落ち込んだクダリは、魔法が無くても戦える手段を探していた。そのときに思い出したのが剣と銃だった。あれなら魔法が無くても使えると思っていたが、作れないと思ったとき、ラボにいた博士に相談してみた。


「剣と……銃? どんなものなんだ? ……ほう、ほう……なかなかおもしろそうじゃないか! 博士に任せておけ、必ず完成させてみせよう!」


 渡した設計図は設計図と言うより子供の落書きと言った方が近かった。それを博士は自分なりに解読して俺の考えている完成形とまったく同じものを作ったのだから、もはや天才の域を超えている。


「ああ、あれか。あれならまだ、楽勝だ。さて、秘密兵器は明日までのお楽しみということで」


 キリアは俺の腰に差さっている剣と銃を抜き取った。


「もうすぐ昼食の時間だ。二人とも行ってきたらどうだい?」


「博士はどうするんですか?」


「博士は研究したい気分だからここに残るよ」


「相変わらずですね、博士。じゃあ、行こうか、アイフィ」


「了解した、マスター」


 アイフィがクダリの中に入り、姿を消す。姿が消えているだけで話しかければ脳内で音声だけだが答えてくれる。


「アイフィ、何食べたい?」


『ホットドッグ!』


「いつもそればっかりだな。俺もホットドッグでいいか」


 ラボのある建物を出ると、広い校庭に出る。噴水が真ん中にあり、そこを右に曲がると食堂や食べ物を売っている様々な建物が住宅街のように並んでいる。俺たちが行くのは一番人気の食堂の奥にある建物だ。一番人気がないと言っても過言ではないほど人は来ない。


「やあ、ネネちゃん。ホットドッグ二つ貰えるかな」


「あ、クダリさん! いつもありがとうございます」


 店の入口はなく、ここで注文して持って帰って食べるという感じだ。

 店の中で注文を承っている女の子はネネだ。鮮やかな水色の髪とぱっちりとした水色の瞳はどこか引き込まれるものがある。そして、大きな特徴としては頭に猫耳と腰に猫の尻尾がついていることだ。本人曰く、『時猫族ときねこぞく』という種族らしい。


「お姉ちゃん、ホットドッグ二つ!」


「あいあい、ホットドッグ二つね」


 奥でホットドッグを作っているのがネネの姉、ルルだ。ネネと同じ水色の髪と瞳、同じく時猫族である彼女は猫耳と尻尾がついている。ただ、ネネより八歳年上の彼女は俺がネネと話しているときはいつも鋭い目つきで睨んでくる。


「はい、ホットドッグ二つ」


 ホットドッグを包んだ紙袋をカウンターの上にドンと置く。


「……私の妹を変態な目で見てたら殺すからな」


「……いや、しませんよ。ルル先輩」


 ルルは隣で立っているネネに聞こえないよう俺の耳元で囁く。


「あれー? こんなところに店なんてあったんだー!」


 現れたのは金髪の男と紫髪の男だ。いずれも俺はこいつらを知らない。


「でもなんか獣臭えよなあ!」


「ははっ、それは言えてる!」


 金髪の男が言って紫髪の男がそれに同意しているという感じだ。二人ともこちらを見ながら言っている。だが、俺はこいつらに対する怒りより、こいつらにこれから起こることを考えると哀れみの目を向けざるを得なかった。


「ほう、お前ら、いい度胸じゃないか」


「っはは……、は?」


 ずっと笑っていた男二人がルルの行動に気づく。ルルは手を地面に押し付けるように動かす。


「紫水式二段リバースアイシクルランス」


 すると、男二人の間を氷の槍が地面から突き出る。


「うっ、うわあああ!」


 男たちは氷の槍に気づくとゴキブリ並みの速さで逃げて行った。


「……そこまで魔法が使えるならここの先生にでもならないんですか、先輩」


「……人に教えるのは苦手だ」

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