第7話『三度目の入学式-2』
「と、ところでさ、なんで二人はここにいるんだ?」
「それはこっちのセリフだよ。なんでクダリは当たり前のようにここにいるの?」
「うっ、まあ、いろいろ……」
どう答えようか悩んでいると、再びドアが開かれる。先ほどと違って壁にドアが叩きつけられて部屋中に音が響き渡る。
「やあ、久しぶりだな、クダリ!」
「す、スケイル!」
金の髪、金の目で黒のスーツを着ている。大きな豪邸に住んでいる貴族という感じの雰囲気が漂っている。いや、実際そうなのだが。
「あっ、この人は……!」
「あのときの……!」
留年していた俺なら知っていても不思議ではないが、入学したばかりのこの二人が知っているとは驚きだ。
「二人とも、知っているのか?」
「ええ、私たちがこの人のパーティーを見学しようとしたとき、まだ見てもいないのに追い返されて……」
「ふっ、だって、君たちはあの五組だろ? うちは一組の優秀な者しか入れない主義だからさ」
この学校のクラスは一組から五組まで五つある。もちろん、クラスは適当に決められるわけではなく、入学時に受けた試験の結果で決まる。優秀な者が一組、そして、俺たち出来損ないの集められたクラスが五組だ。
「でも、なんでクダリもこいつのこと知ってるんだよ」
「そ、それは……」
「あれ、まだクダリ言ってなかったのか?」
答える言葉が思いつかずに困っていると、スケイルが悪魔のような笑みを浮かべて答える。
「それはなあ……」
「や、やめ――」
「こいつとは二年前、同じ一組だったからなあ!」
「え、二年前って。だって、クダリはまだ入学したばかりの三等士……」
サリィとリュウカは信じられないと言わんばかりの表情でスケイルに言う。
「だから、こいつ、二年留年したんだよ」
クダリは椅子に座ったまま黙り込む。
「え、留年って、でもこの名門校でそんなこと……」
「有り得るんだよ、こいつ、魔法が使えないんだから! それに……」
「……そのくらいにしておきなさい」
カイナが瞬間移動かと思える速さでスケイルの懐に入り、右の手のひらをスケイルの顔に向ける。スケイルの額から冷や汗が流れ落ちる。
「……わ、わかったよ、カイナ先生。さて、本題に入ろうか。今日は、君たちのパーティーと模擬戦がしたくてね」
「な、模擬戦って、そんなの受けるわけが……」
椅子から立ち上がって言う。
「いいのかい、クダリ? 君たちのパーティーは五月までにどこかのパーティーに勝たなければここは解散になるんじゃないのか?」
「くっ……」
ここは、俺にとっての唯一の居場所と言っても過言ではない。それを俺がこの勝負を受けないことでここが無くなってしまうのは嫌だ。
「……わかった、その勝負、受けよう」
「ふっ、君ならそう言ってくれると思っていたよ。時刻は明日の放課後、場所は模擬戦場。それまで、最後の日を過ごすんだな! はっはっはっ!」
スケイルは高笑いをして、部屋を出て行った。
「クダリ、どうするの。模擬戦は生徒三名と教師一名で戦うのよね。明らかに人数が足りないけど……」
「あたしたち、パーティーに入ろうか?」
俺たちがそんなやり取りをしていると、後ろからリュウカの声が聞こえた。
「いや、入学したばかりの二人を模擬戦に巻き込むわけには――」
「いえ、私たちは構いません。協力させてください!」
「友達を助けるのは当然でしょ!」
「…………わかった。ようこそ、俺たちのパーティー、またの名を『ラボ』へ!」
俺は天使のような優しい心を持った少女たちに手を差し出す。