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偽りのワールドブレイカー  作者: 宵月渚
第一章『偽りの日常』
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第5話『偽りの世界-2』

「話はまとまったか? それじゃあ、自己紹介しないか? まだ我がマスターの名前を聞いていないのでな」


 そういえば、俺も彼女たちの名前を聞いていない。いや、聞いていないと言うより聞いている余裕がなかったと言うべきか。


「じゃあ、私から。私はカイナ」


 短い自己紹介が病院の中を沈黙の空気に変える。転校してきたときもそうだったが圧倒的なまでに短い。


「そ、それだけ?」


「ええ、それだけよ」


「なんか、転校してきたときもそうだったけど、カイナって自己紹介下手くそだよな」


「うっ……!」


 カイナは燃え尽きた灰のように椅子に座った状態で静止する。よほど、心に深いダメージを負ったようだ。


「マスターの言葉でひどく傷ついておるな……」


「初めて……言われた……」


「う、嘘だろ……」


 俺はカイナが転校してきたときのみんなを思い出す。先生は動揺して何も言えなかった、クラスメイトはたくさん質問していたが。……あれ? カイナはクラスメイトの質問に答えたか? いや、よく思い出そう。コウトが質問してそれに続いてみんなも来たんだ、そして、ずっとカイナが黙り込んだ状態でチャイムが鳴った。ん? もしかして……


「なあ、カイナ。お前、友達っているのか?」


 カイナは数秒ほど顔をうつむかせて黙る。


「……い、いない」


「やっぱりそうか……」


 みんなにあんな素っ気ない態度ばかり取っていたからもしやと思っていたが。まあ、俺が言えたことではないが。

 そして、再び沈黙の空気で溢れる。クダリは落ち込むカイナから少女の方に視線を向ける。


「ん、自己紹介すればいいのか? えー、ごほん。我は一等神界、戦略の女神アイフィアス・リアスレイリアだ」


「女神……?」


「マスターは偽りの世界にいたから知らないはずだな。カイナといったか? 説明を頼んでもいいか?」


 先ほどの傷がまだ完全には癒えていないのか顔にどこか暗さを感じる。


「女神っていうのは偽りの世界を含む全世界の監視を行っている神聖な方たちよ。まあ、私も見たことはなかったんだけど」


「へえ、普通に神様仏様って感じなんだな」


「ああ、表面上はそういうことになっている」


「え? 表面上はって……」


 女神の怪しげな言葉が心につっかかる。


「事実は世界の監視なんかだるいからみんな神界でぐーたらしている。それが女神の真の姿だ」


「……引きこもりかよ!」


「ああ、マスターたちの言葉でいうならそれが適切かもしれないな」


 なんか、子どもたちの夢が壊れたような気がして悲しくなった。


「でも、仮にも女神様なんだろ、そんな偉い人がなん俺の前に現れたんだ?」


「答えは一つ、気まぐれだ」


 女神は小悪魔のような笑みで指を一本立てる。まあ、自堕落な女神なら充分有り得ることだな。この女神を見ていると自然とため息が出る。


「こんなんだけど、実力は確かよ。私の魔法も軽々と吹き飛ばしたんだから。でも、戦略の女神って聞いたことがないわね……」


「まあ、よいではないか。さあ、次はマスターの番だぞ」


「えーっと、俺は蒼霧条。クダリって呼んでくれたらいい。よろしく、カイナ、あと……アイなんとか……さん?」


 名前が長かったので最初のアイなんとかぐらいまでしか覚えられていない。目の前の女神もそんな俺の気持ちを察してくれたように言う。


「アイフィでいいぞ、マスター。末永くよろしく頼むぞ」


 それを俺に言うのは語弊がある気がするが、まあ、この際、細かいことは気にしないでおこう。


「うん、よろしく、クダリ」


 俺はカイナと握手する。


「で、世界を壊すって具体的にはどんなことをすればいいんだ?」


「実はワールドブレイカーを育成する学校があるんだけどそこに通ってほしいの。クダリ、歳はいくつ?」

「この前、十四になったばかりだけど」


 中学二年生に進級して誕生日が四月の俺はこの前十四歳になったばかりだ。


「そう、なら私と同級生ってことね。ホントはあと二年経たないと入れないんだけど、色々事情がある人は特別に入れるようになっているわ」


「へえ……飛び級みたいなものか」


「クダリならきっと勉強にもついていけるわよ」


 学校では勉強でも運動でも常に平凡、そんな俺が飛び級なんかして勉強についていけるとは到底思えない。


「できる……かな……」


「大丈夫だ! 貴殿は我が認めた男だぞ」


「そうだな……やる前から諦めてたらダメだよな。それに、選択肢は元からないもんな……。わかった、ワールドブレイカーの学校に入るよ!」


 こうして、俺はワールドブレイカーを育成する学校に飛び級のような形で二年早い高校一年生のような形で入学した。


 そして、月日は流れ、二年後。――俺はまだ高校一年生だった。

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