第40話『ここではないどこか-3』
「――ここは……?」
「クダリ? どうしたの?」
隣にはアイリとコウトの姿があった。ちょうど、それぞれの家にわかれる分岐点となるところだ。
「え、なにが?」
「もう、また人の話を聞かない! せっかくの夏休みだからこれからも三人で遊ぼうよって言ったの!」
クダリが倒れる前に聞いた言葉だ。もしかして、あのときは、ただ気を失っただけなのか。
「ああ、明日も三人で行きた――」
何事もなかったように答えようとしたそのとき、不意にアイフィの姿が思い浮かんだ。そこでクダリは全てを思い出した。
「そうだ、俺は、帰らないといけないんだ……」
「おい、クダリ。どうしたんだよ」
この二人はもういない。全て、偽物だったのだから。偽物の居場所にすがって生きても仕方がないよな。今の俺の居場所は――このラボだ。
「ごめん、みんな。帰らなくちゃ、俺の帰りを待ってくれるみんなの下へ」
「……そう、クダリ……全部思い出したのね」
「……ほんの少しの時間しか会えなかったけど嬉しかったぜ」
「「……行ってらっしゃい!」」
周りの建物をまばゆい光がのみこんでいく。次第に、涙を浮かべ、笑顔で手を振る二人をものみこんだ。
「……ああ、行ってきます!」
光は最後に一緒に涙を流すクダリをのみこんだ。
「はっ!」
そして、クダリは勢いよく飛び起きた。
「マスター!」
クダリの体に抱きついていたアイフィが顔を上げ、クダリの帰りを迎える。ずっと、こうして待っていてくれたのか……。
「アイフィ、ごめん。心配かけちゃったな」
「いや、謝るのは我の方だ……」
「え? どうしてだよ。アイフィは何もしてないだろ」
アイフィは顔をうつむかせる。
「いや、我が本当の能力を使っていれば、マスターは死ぬことなんてなかったのに!」
「え? 死んだ……?」
「ああ、マスターはこの上から落ちて呆気なく死んだのだ」
クダリは暗闇の底から上を見上げる。明かりが差し込めてもいいはずなのにこの奈落には一切の光すら届かない。
「じゃあ、なんで俺は今、こうして生きているんだ?」
「我の本当の能力を使った」
「本当の能力? アイフィの能力は戦略だろ?」
「違うのだ。我は戦略の女神ではない。我は――」
アイフィのずっと閉じられた左目が開かれる。その瞳は血に染まったかのような深紅に輝いていた。
「――運命の女神だ」




