第38話『黒炎舞う戦場-1』
「黒炎式五段ヴィジャスダーク・ライアーフレイム!」
「ディア=クリスタル!」
クダリから放たれた魔法は最上級に近い五段魔法、見た目はただの炎が浮いているように見えるが、中には大量の闇が無理やり詰め込まれており、ほんのわずかの衝撃で爆発するだろう。
一方で理事長の魔法は言葉からカイナたちの世界の魔法ではないことは一目瞭然だ。謎の呪文を唱えると無数の鋭い水晶がクダリへ飛んでいく。二つの魔法は衝突すると大爆発を起こし、爆発が止むとどちらの魔法も互いに打ち消し合っていた。
「なかなかやるな、さすがは『言の魔』、謎だらけの魔法だな」
「いや、これは魔法ではないよ。それに、私の方からすれば君たちの魔法の方が理解できないな」
「ふっ、偽物風情が!」
理事長と大人のクダリはラボのメンバーとは別次元の戦いを繰り広げている。
「……どちらもすごいわね」
その戦いを傍観しているカイナの口からそんな言葉が発せられる。
「五段魔法を使っても平気なんて、何者……?」
同じくサリィも感心する。
「魔法のことはカレンにはわからないよ。でも、助けに行かなくていいの?」
「……そうしたいのは山々なんだけど、私たちが助けに行ったとしても足手まといになるのがオチよ」
「クダリ……大丈夫かな……」
リュウカからはクダリを心配する言葉が出る。
「この高さから落ちて生きている方が奇跡よ。……けど、クダリならきっと生きている。今は、信じましょう……」
正直、生きている確率はゼロに等しい。それはこの場の誰もが感じていた。
「……うぅ、ここはどこなんだ、マスター?」
クダリが落ちる前に実体化していたアイフィが倒れているクダリに話しかける。だが、クダリからは何の答えも返ってこない。
「……マスター? 返事をしてくれ、マスタぁ……」
アイフィはそれでも返答しないクダリに話しかける。
「ううっ、なんで、なんで、答えないんだ、ますた……」
アイフィは泣きながらクダリの肌に触る。
「…………そんな、嘘だろ、ますたあっ!」
クダリの肌は冷たかった。まるで、死人のように。
「マスターっ! マスターっ! ますたあああっ!」
アイフィは涙を雨のように流してクダリに抱きついた。
「いい加減倒れろっ! 黒炎式六段トリプルライズバーニングダーク!」
「それはできない話だ! ディア=メモリー!」
クダリの魔法は先ほどとは比べ物にならないほど強力な六段魔法を使う。闇を纏った紫の炎はどんどん巨大化していき、自分の体の三倍ほどまでに大きくなる。
それに伴って理事長の言の魔という魔法も強力になっている。理事長の手のひらに乗った光の球体は時間が経つにつれ、分裂していき最初一個だった球体は百をゆうに超えるほどみるみるうちに増殖していく。再びお互いの魔法はぶつかり合い、相殺されて爆発を起こして消滅する。
「なぜ、倒れない!」
「なぜって、教えてやろう。……守りたいものがあれば人は強くなれるのだ! 壊し続けていた君にはわからないだろう」
「理解できないな、守ったところで何になるんだ」
「それがわからないようでは、お前はその程度ということだ」
「ふっ、戯れ言をっ! 黒炎式二段シャドウフック!」
「なにっ!」
突如、理事長の足元に黒い鎖が現れ、右足を縛る。
「黒炎式三段ブラックグラビティ!」
理事長は身動きが制限され、その隙に二つ目の魔法を使う。理事長にだけ常人の三倍以上の重力がかかる。理事長は立っていることすら困難になり、その場に膝をつく。
「黒炎式五段ヴィジャスダーク・ライアーフレイム!」
『マスター、これは少々まずいのでは……』
『ああ、そうかもしれない……!』
闇を包んだ巨大な炎は動けない理事長の下まで近づいていき、理事長に触れると大爆発を起こして理事長を爆発で生じた煙が囲んだ。




