第37話『ここではないどこか-2』
「おかしいな……。いったいここはどこなんだ……? それに、なんでいきなりここに来たんだ?」
晴れない疑問を胸に、自分の家へと向かう。道などは特に変わっていないようで家まで迷わずに辿り着くことができた。
「お兄ちゃん、おかえり!」
「……ああ、ただいま、カレン」
家のドアを開けると玄関でカレンが迎えてくれる。
「どうする? ご飯はどこで食べる?」
「……じゃあ、カレンと一緒に食べようかな」
「わーい、久し振りに一緒に食べられる!」
「いただきまーす!」
カレンが作ってくれた料理は久しぶりに食べたからか、とても舌に溶け込むようなスープを食べると涙が出てきた。
「え、なんで泣いてるの?」
「い、いや、ちょっと目にゴミが……」
テレビをつけながら黙々と食事をする。
「続いてのニュースです。昨日、十六時十分ごろ、――市で不審者が目撃されたとの情報が入りました。なんでも、中学生ばかりを狙っているようなので、中学生のみなさんはなるべく一人で行動しないよう――」
「不審者か……実はお兄ちゃんだったりして……」
「なわけないだろ!」
「ははっ、冗談だって!」
カレンの冗談に付き合わされつつご飯を食べた後、一人で風呂に入り、ベッドで寝た。
「結局ここはなんなんだ……? 偽りの世界、だよな……」
「うわっ、なんだこの行列は!」
「あ、そうか、クダリはライブとは初めてだもんな。この様子だと二時間か三時間はかかりそうだぜ」
「そんなにかかるのか!?」
終わりの見えない三つの列の中に並んでいるが、まさか二時間もかかるなんて信じられなかった。だが、コウトの言った通り本当に二時間かけてライブの会場に入ることができた。会場の中は映画館と似たようにステージ以外は真っ暗だ。開催時間になった瞬間、ステージに赤髪の女の人が現れる。あれが、光と闇の歌を担当している人、いわゆるボーカルというものだろうか。そして、そのボーカルに続いてギター、ベース、ドラムの三人の男性が現れる。そして、唐突に歌が始まる。力強い、情熱的な歌だ。
「やっぱいいよな、ボーカルのリアは」
右に座っているコウトからそんな言葉が聞こえる。
「リア?」
「お前、リアを知らないのかよ。まあ、昨日知ったばかりだから仕方ないか。リアの歌声は優しく柔らかな光のような歌と、力強く激しい闇のような歌があるから光と闇ってバンド名らしいぜ」
なるほど、別に中二病ってわけでもないのか。先ほどのコウトの説明からすると最初の歌は闇ということか。このバンドの歌を聴いていたら幸せな気分になれる。だが、俺にはやらなくてはならないことがあるんだ。ここでのんびりしている暇はない。
「――ああ、ライブ終わっちゃったね……」
「そうだなあ、今回は長かったよな」
「そうね、明日はどうする。またみんなで遊ぼうよ」
アイリとコウトが俺を挟んで会話する。ライブが終わるとすっかり夕方になっていた。
「じゃあ、カラオケとか行こうぜ! クダリもどうだ?」
「いや、俺はちょっと……」
目的を見失うな。俺にはやらなければいけないことがあるんだ。
「どうしたの、クダリ? 明日、何かあるの?」
「そ、そんなことはないけど……」
「じゃあ、行こうよ。せっかくの夏休みだよ? これからも三人で遊ぼうよ」
そうだ、この世界にはアイリやコウトがいるんだ。目的……あれ? 目的ってなんだっけ? まあ、いいか。このまま、三人一緒で幸せに過ごせれば……。
突然、視界がぼやけ始める。
あ、あれ……。力が入らない…………
クダリの視界は暗闇に包まれ、地面からの強い衝撃を受けてクダリはそのまま動かなくなった。




