第31話『ルルとの出会い-2』
「あんた、どこのクラスのもんだ?」
「え? 三等士五組ですけど? あなたは?」
ある日、模擬戦場裏でクダリが木刀で素振りをしていたとき、ルルがクダリに話しかけた。
「あたしはルル、暇だったから散歩してたらあんたがいたってわけだ。で、名前は?」
「クダリ、です」
「クダリか。どうしてこんなところにいるんだ? それに、なんで刀を振り回しているんだ?」
刀、その言葉がこの世界の人から出るとは予想外だった。
「これを知ってるんですか!?」
「まあな、ちょっと昔に使ったことがあってな。……うーん、まあ、暇だしな。ちょっとくらいなら教えてやってもいい」
「ぜひ、教えてください!」
こうして、クダリはルルと一緒に剣術の練習をすることになった。
「おい、腰が引けてるぞ! そこはもっと前に出せ!」
まあ、とてつもなく厳しい練習だったが。
「よしっ、今日はここまで!」
「ありがとうございました!」
「あ、そうだ。クダリ、ちょっとうちの店に寄って行かないか?」
「え、別に構いませんけど。店?」
唐突に店と言われて驚く。こんなに若い人が店?
ルルに連れられてクダリはホットドッグの店に連れて行かれる。
「ここが、ルル先輩の店、ですか?」
「ああ、一度パン屋でもやってみたくてな。妹と一緒に営業してるんだ」
「へえ、妹、ですか……」
「お前、うちの妹を変な目で見たら殺すからな」
「い、いや、見ませんって!」
このセリフを吐くのは今と全く変わっていない。妹想いの優しい先輩だ。いや、優しい……のか?
「あ、おかえり! お姉ちゃん!」
「ああ、ただいま、ネネ! さあ、紹介しよう。この子はあたしのかわいいかわいい妹、ネネだ」
「あ、よろしく、ネネちゃん。俺はクダリだよ」
ネネは猫の耳をぴょこぴょこさせながら言う。
「はい、よろしくお願いします! クダリさん!」
「――おいおい、なんか獣臭いぞお!」
小太りした少年とその取り巻きが現れる。
「仕方ありませんよ、ロッテル様。ここは獣の運営している店ですから」
ルルの耳がぴくぴくと動く。
「おい、お前ら……!」
「な、なんだ? 余には向かうというのか!」
「知ったことか! 今すぐ帰れ! この豚が!」
ルルは木刀で豚と呼んだ少年たちを叩く。
「い、痛い! なんだ、この乱暴な獣たちは! 行くぞ!」
少年がそういうと取り巻きたちも逃げ出した。
「先輩、今のは?」
「あたしたちにはさ、人とは違うこの猫耳があってさ。時猫族っていう種族なんだよ」
確かに、猫耳があるな。
「なかにはさ、そんな種族を認めようとしない変な輩がいるから生きるのにも苦労してるんだよ。さっきのような連中はよく来るし。お前は、あたしたちを見ても何も思わないんだな」
「何も思わないことはありませんよ。その猫耳、かわいいなって思うくらいですよ」
「ってことがあってさ」
「思いっきり口説いたな、マスター?」
アイフィがむすっとした顔でこちらを見る。
「え、なにが?」
「いや、いい。超鈍感と名高きマスターに言った我がバカだった。しかし、ラボもまた偽りの世界か、大変だな」
「まあ、前回は俺とカイナががんばったから、今回は二人が中心となってなんとかしてくれるだろ」
「そうだな、いざとなれば我とマスターが動けばいいのだからな。二人なら我らは最強なのだからな!」
「ふっ、アイフィにしてはいいこと言ってくれるじゃん!」
クダリたちはホットドッグで塞がれていない方の手で拳を強く合わせる。
しかし、前回の偽りの世界で気になったこともいくつか出てきたな。
「なあ、アイフィ……。一つ聞いてもいいか?」
「なんだ?」
「前に一等神界や二等神界については話してくれたよな。強い能力順に階級がつけられているって」
「ああ、言ったな」
「じゃあ……アイフィの能力ってなんなんだ?」
能力に階級がつけられるのならそれ相応の強さが必要だ。アイフィの能力は戦略、しかし階級は一番上の一等神界。それだとしたら考えられるのは二つ、アイフィが一等神界であることが嘘なのか、それとも戦略の女神というのが嘘なのか。前者は、前にカレンの女神、シェリゼがアイフィのことを一等神界の女神と言っていたからその可能性は消える。
「…………何を言っておるのだ? 我の能力は戦略に決まっているだろう? 前から戦略の女神って言っていたではないか」
アイフィは少し考え、間をおいて言った。
「……そういえばそうだったよな。悪い、ちょっとボケてきたのかもしれないな」
クダリはアイフィが嘘をついていると一目でわかった。二年もそばにいれば、嘘か本当かはだんだんわかってくる。だが、あえて言及はしなかった。それは、アイフィを信じているからだ。そのときになればアイフィは教えてくれるだろう、本当のことを。




