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偽りのワールドブレイカー  作者: 宵月渚
第三章『偽りの妹』
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第28話『パーティー解散-1』

「――クダリ、クダリっ!」


「……ここは? それにみんなもいる……」


 目が覚めると俺は立ったまま呆然としていた。辺りを見回すと、カレンと握手をしてから全く場所は移動していないようだ。今まで姿の見えなかったサリィとリュウカもいる。そして、地面には偽りの世界に行くときに使った魔方陣が光っている。


「今、理事長に頼んで魔方陣をここに描いてもらったの。それより、大丈夫なの? ぼーっとしてたけど」


 特にみんなに言うことでもないだろう。そんな考えで黙っておくことにした。


「いや、なんでもない」


「……そう。じゃあ、帰りましょ」


 カイナに促され、魔方陣の上に乗る。行きと同じように光に包まれ、最後に目に映ったのはカレンのいた世界がだんだんと崩壊していく姿だった。


 おそらく、あれはこの世界の俺だ。最後、どうなったかはわからないが、カレンの言った通り死んだのだろう。そんなことを考えていると、もう学校に着いていた。


「じゃあ、カレンのことは私が理事長に掛け合っておくから。ここで解散ね」


 みんなとはここで別れ、それぞれの自室に戻る。偽りの世界に行っても時間は経過するようで帰ったときには日は沈み、夜になっていた。


「はあ……やっと帰って来れたな」


 寮の自室に着くと同時にアイフィが人間の姿になって出てくる。


「まったくだ。あのときはどうなるかと思ったぞ」


「仕方ないだろ。銃弾がなかったんだから」


 クダリはいつも通り食事の準備を準備をする。今日は珍しいことにアイフィがクダリの隣に立つ。


「ん? どうした、アイフィ?」


「い、いや、我もたまには料理でも手伝おうかと思ってな」




 料理はできるのか。その疑問に答えるとしたら答えはノーだ。まったくといっていいほどできない。だって、女神なのだから食べる必要はないのだ。料理などしたこともない。ならば、なぜ料理をしたいと言い出したのか。それは――


「……いたっ」


「おい、大丈夫か、血出てるぞ。……というか、アイフィ、料理できるのか?」


 さっそく、疑われた。いきなり包丁で左の人差し指を切れば無理もないか。


「で、で、できるから! マスターは見守っていてくれ!」


 血が出た指を舐め、再び包丁で野菜を切る。手際が悪く、大きくなったり小さくなったりと不格好な野菜が残った。


「見てられないなあ、うちの女神さまは。俺がお手本みせるからよく見ておくんだぞ」


 クダリは真剣な表情で野菜を切る。野菜以外の物に視線を向ける様子はない。仕掛けるなら今か。クダリの下へと音を立てずに慎重に近づいて頬に唇を当てる。それに驚いてクダリは激しい動揺を見せる。


「な、な、なにしてるんだよっ!」


「なにって、これはマスターの国で言う愛情表現なのだろう?」


「愛情表現って、そういうのはホントに好きな人にするものなんだよ」


「……我はマスターのこと、好きだぞっ」


 アイフィはクダリにウィンクして去った。

 ――ふふっ、成功したようだな。




 な、なんなんだ。いきなりキスするだけして帰っていったぞ。あいつ、そんなことをするためだけに料理を手伝うとか言ったのか。ひどい冗談だな。俺は特に気にも留めず、平然とした顔で料理をする。


「「――ごちそうさまでした」」


 合掌をして、後片付けを終え、ベッドに寝転がる。アイフィは俺の寝ているベッドに座る。まるで、カイナに病院送りにされたときに見た光景だな。


「明日も、ずっと、ラボのみんなで過ごせるかな……」


 俺は右手を上に掲げ、部屋を照らす灯りに重なるように手を広げる。


「……そうだといいのだがな……」


 アイフィが冷たく、そして静かに言った。


「え? どういうことだ?」


「いや、単なる我の思い過ごしでよければいいのだがな……。いや、気にしないでくれ」


 アイフィにはそう言われたが、どうしてもそんな言葉が気になって眠れなかった。


「ふぁあああ……博士、おはようございます…………」


 翌日、眠れなかったからなのか、キリアを除いた誰よりも早くラボに着き、研究室に籠っているキリアにあくびをしながら挨拶をする。


「どうした、クダリ。やけに眠そうじゃないか」


「まあ、いろいろ考えごとをしていて……。でも、珍しいですね。カイナは授業があるから来れないのも無理はないですけど、いつも早く来ているあの二人も来ないなんて」


 それを聞いたキリアが熱心に続けていた作業を止め、こちらを向く。


「え、知らないのかい?」


「知らないってなにがです?」


「あの子ならパーティーを――脱退したよ」

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