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偽りのワールドブレイカー  作者: 宵月渚
第三章『偽りの妹』
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第27話『偽りの妹-3』

「――もうやめて! シェリゼ!」


 カレンが叫ぶとカレンの体は石化したように動きを止める。槍は俺のまつ毛に当たるほどの距離で静止する。勢いのある槍の動きを無理に止めたため、暴風がクダリを包むように吹き荒れる。

 カレンの女神化が解け、中に潜んでいた女神が光と共に現れる。現れたのは、紅葉のように赤い髪と、鮮血に染まっているかのような赤い瞳のアイフィと同じくらいの幼さだ。


「マスター、なんで止めるの……? こいつら殺そうよ!」


「ダメだよ……この人はお兄ちゃんと同じ見た目をしているけど別人とは思えないもん」


「なっ、もしかして、気づいていたのか……?」


「まあ、途中からね。一度死んだ人間は戻って来ないってお兄ちゃんに言われたから。この人は本当のお兄ちゃんじゃないんだって。でも、最初に名前を聞いたとき、カレンの名前を知っていてお兄ちゃんと同じ名前の人だったから、完全に違う人とは思えなかったよ」


 カレンは悲しみの涙を浮かべながらも笑顔で答える。

 クダリも、女神化を解き、アイフィが姿を現す。


「久しいな、シェリゼ」


「アイフィアス……」


 お互い、感動の再開という雰囲気ではなく、お互い睨んで因縁の対決といった感じだ。


「なんで一等神界ともあろうアイフィアス様がこんなやつと契約しているのかなあ?」


「それは我の気まぐれだ」


「ふーん、ホントかなあ?」


「なあ、アイフィ、一等神界ってなんだ?」


 今まで何回もその言葉を聞いたが、ごくたまに聞くぐらいだったため、あまり気にしてはいなかったが、ここまで頻繁に聞くようになるとさすがに気になる。


「そうだな、どう説明しようか。我らの神界には三つの階級みたいなものがあるのだ。それぞれ、能力の高い女神から一等神界、二等神界、三等神界と呼ばれている。まあ、階級があるからといって上下関係があるわけでもないがな」


「なるほど……」


「……うーん」


 曲がり角の辺りで倒れていたカイナが目を覚ます。


「…………え? ん? ……なに? どういう状況……?」


 カイナからすれば、いきなり変身したカレンに襲われて、目が覚めるとよくわからない少女が増えており、戦闘も終わっているのだから理解できないのも無理はないだろう。


「あ、えーっと――」


 俺はカイナが気絶してからいままでに起こったことを包み隠さず説明する。


「二人目の女神……。それがあなたの妹と契約しているってこと?」


「まあ、そういうことだ。これで、カレンがワールドブレイカーになってくれれば殺さなくてもいいんだろ?」


 女神は絶大な力を持っている、そんな人物が仲間になるのは学校側としてもいい話だ。


「……厳密にはそういうことではないんだけど。でも、仮に私が認めなかったら強引にでも帰るんでしょ? 私一人で女神二人を相手するのは不可能、結局はこのまま連れて帰るしかないみたいね」


「じゃあ、これからよろしくな、カレン!」


「はい、よろしくお願いします。……お兄ちゃん!」


 クダリはカレンと握手を交わす。その瞬間、視界が光で包まれる。




 次に目を開けると、そこは終わりの見えない砂漠が延々と広がっている空間だ。クダリは軍隊のように整列された人の集団の中にいた。隣には俺と同年代くらいの金髪の男が金の槍を地面に突き立てるようにして持っている。どこかで見た覚えがあるが、もしかして、こいつは――


「よお、クダリ。最後の最後までお前と同じ隊とはな」


 コウト――! そう叫んだつもりだが、声に出ない。それどころか動くことすらできない。


「最後とは諦めが良すぎるんじゃないのか。お前にしては随分と弱気だな」


 今度は俺の口が勝手に開く。どういうことだ。確かにこれは俺の体、いや、もしかして、これはこの世界の俺の体なのか。


「だってよ、今回は精鋭部隊が全員でかかっても倒せなかった相手だぜ。それを、新人の寄せ集めの俺らが倒せるのかよ。捨て駒に使われたとしか思えねえぜ」


「もし、そうだとしても、俺は簡単に死ぬつもりはないぞ。妹のためにも生きて帰らないといけないんだ」

 コウトがクダリの手に持っている黒い槍を見る。


「そういえば、お前、今日はあの銀の槍じゃないんだな」


「ああ、これか。妹があまりに泣いて俺が行くのを止めるから槍を俺の代わりだと思えって渡した」


「ふっ、相変わらずお前は不器用だな」


「うるせっ、おっと、そろそろ敵さんのお出ましのようだぞ」


 全て平らな砂漠だったはずが、ある部分だけが高く膨らんでいき、まるで俺たちの前に立ちはだかる巨大な壁のように砂が持ち上げられる。その砂が振り落とされたときに見えた生物の姿はサメとカジキを合わせたような見た目をしており、大きさは学校を余裕で飲み込めるほどの巨体だ。あいつからすれば、俺たちはアリのような存在だろう。


「よしっ、じゃあ行くぞっ!」


 全軍があの巨大生物に走っていく。クダリの意識はここに来たときと同じように光に包まれて途絶える。

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