第22話『偽りの世界へ-1』
「あー、また負けたー!」
「これで我の五連勝だな」
結果は五戦中、全て敗北の完敗だった。それでも、この授業は楽しかった。
『えー、三等士五組のクダリくん、至急理事長室まで来てください』
授業終了のチャイムの後にそんな放送が流れる。入学時に誰もが見たことのある理事長が直々に俺を指名する。これは何かあると思うのが自然だろう。
「理事長、どんな人なのだ?」
「入学したときに一度だけ会話したことがあるけど普通にいい人だったな。というかお前も聞いてたんじゃないのかよ」
「寝てたっ」
アイフィはいつも通り、誇れることでもないことを誇らしげに言う。
そんなダメニートのアイフィを連れて理事長室に向かう。
『ここか?』
「ああ、間違いない」
クダリはトントントンと三回ノックをする。
「どうぞ」
穏やかな男性の声が聞こえる。
「失礼しまーす……」
部屋は電気が煌々とついており、三メートル先で理事長が椅子に座っている。
「やあ、よく来てくれたね、クダリくん。まあ、そこにかけてくれ」
理事長が用意した椅子は周りに机も何も置かれておらず、理事長の顔がすぐ目の前に映っているような感覚で落ち着かない。テレビで見たことがあるが、裁判でいう裁判官と被告人のような位置関係だ。
「こうして話すのは久しぶりだね。君が入学してきたとき以来だね。どうだい? 学校には馴染めたかい?」
「ええ、まあ……」
「昨日、試合があったそうじゃないか。私はその日、重要な会議があったから見れなかったのだが、聞いた話によると試合に勝ったらしいじゃないか、おめでとう!」
「あ、ありがとうございます」
「さて、本題に入ろうか」
クダリはゴクリと息を呑む。
「君に偽りの世界に行ってもらいたいと思ってね」
理事長の言葉が予想を上回りすぎて驚くしかなかった。
「い、偽りの……世界!?」
「ああ、君たちのパーティーはわが校の最上位クラスであるスケイルくんのパーティーを倒したんだからね。それだけの実力はあると思ってね」
「でも、偽りの世界に行くってことはつまり、ワールドブレイカーの仕事をするってことだろ。俺たちにそんなことできるのか……?」
「大丈夫だよ、カイナくんも三等士のころから偽りの世界に行っていたからね」
なるほど、俺の世界に来たときも妙になれていたのは三等士のころから偽りの世界を壊していたからか。
「それに、最初から対象が難しい世界を選んだりはしないよ。こちらで選んだ簡単なところに行ってもらうから安心してくれていい」
「まあ、そういうことなら任せてください」
「うむ、頼もしい返事だ。じゃあ、詳細は放課後、君たちの顧問であるキリア先生にお願いしておくから」
「わかりました」
クダリは理事長室の大きな扉を開けて廊下に出る。
「ふぅ……な、やっぱり優しい人だっただろ? アイフィ」
『そうか? 我はなんだか嫌な感じがしたがな』
「ん? どうしてだよ」
『マスターと会話しているときマスターではなく我を見ているような気がしたのだが……』
そう言われてみれば理事長の鋭い視線は俺に向けられたものではない気もする。だが、
「気のせいだろ」
そんなことは有り得ないだろう。なぜなら、あの理事長には入学したときに俺が偽りの世界出身だということは話しても女神のことまでは話してないのだから。




