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偽りのワールドブレイカー  作者: 宵月渚
第二章『三度目の正直』
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第17話『反撃。からの決着』

 ゴディーは特にクダリを追いかけることもなく適当な方向へと歩き出す。


「魔法なしの生徒にははっきり言って負ける気がしねえなあ……」


 ゴディーはただまっすぐに歩く。だが、その方向にはにわかに信じがたい光景が目に映る。


「火……? こんなところに火なんてあったか? ……まあいいか」


 ゴディーは燃えている木を無視して別の道を行く。


「……は?」


 その道も燃え盛る炎で通れなくなっていた。この道だけではなく、ゴディーの周りが火で囲まれている。


「なるほどな……だが、これくらいの火で俺を倒せると思っていたのか? 水連式三段ウォーターネット!」


 カイナの魔法を凌いだときと同じように水で自信を覆って外に出る。しかし、今度は絶対に倒れるはずのない巨木がゴディー目掛けて倒れ始める。


「な、なんだ! 何が起こっている! 天竜式四段プラスマジックライトニングレーザー!」


 倒れてくる巨木を極太の雷のビームで吹き飛ばす。


「はあっ、いったいなんだってんだ……ぬわっ!」


 ゴディーは前に一歩足を踏み出すが、突如、踏み込んだ足場が崩れ出す。落とし穴だ。普段のゴディーなら持ち前の反射神経で避けられるはずなのだが、魔法で体力を消耗したゴディーは踏みとどまることが出来ずに穴に落ちる。そして、自分の身長以上ある穴から出ようと草の生えた地面に手を伸ばして穴から顔を出す。しかし、その異質な光景にゴディーは驚愕の表情を表す。


「な、なんだこれはっ!?」


 顔を出した方向からとてつもない速さで大岩が転がってくる。穴の大きさとあの岩の大きさからすれば穴の中に隠れたとしても、岩が上から降ってくるという形で死ぬ。ここで、防ぐしか生きる方法はない。


「天竜式四段プラスマジックライトニングレーザー!」


 先ほどと同じように雷のビームが大岩を貫通し、粉々になった石の欠片が辺りに散らばった。ゴディーは動こうとするが手に力が入らず、深い穴の中に落ちる。


「はっ、はっ、ちょっと魔法を使いすぎたな……」


「随分お疲れのようだな」


 ゴディーの入っている穴を嬉々とした表情を隠しきれていない少年が見下ろす。




 それは、三十分前の話。


『木のところまで案内したけどどうするんだ、マスター』


「まあな、ちょっとこの森を燃やし尽くそうと思ってな」


 クダリは先ほど戦った場所に移動する。まだ、カイナの放った魔法が木に燃え移って燃え続けている。クダリは辺りに落ちている木の棒を拾って火に近づける。


「よし、五本あれば充分か。次は……」


 次に、クダリはそびえたつ岩山へと向かう。そこは、森の様子が見渡せるため、上からの魔法による奇襲以外の目的でここに来るものはいない。しかし、俺が今回来た目的は――


「これくらいの岩ならちょうどいいかな」


 クダリは自分の身長を超える大岩を手で押しながら運んでいく。そして、運ぶと同時に山から森の景色を見る。ジャングルの木々で全ては把握できないが、まっすぐ歩くゴディーの姿が見える。


「なるほど、あそこか……」


 クダリはゴディーの進行方向に先回りして岩を運ぶ。


『ここまで岩を運んできたが、どうするつもりだ?』


「まあ、見てろって」


 クダリは持っていた木の棒を地面に刺す。円のように並んでいる木の外側に手で穴を掘る。やはり、足で踏んでみて気がづいたが、ここの土は思ったよりも柔らかい。

 クダリの予想外な行動にアイフィが驚く。


『マスター!? なんで穴なんて掘って……』


「落とし穴だよ。スコップとかはないから手で掘るしかないけど、さっき見たゴディーの位置からここに来るまで推測するにあと三十分、充分間に合う」


 素手で穴を掘ることなど初めての経験だった。だが、見る見るうちに穴が広がっていきクダリの身長を超えるほどの高さまで掘る。


『ここまでで、三分だな。次はどうするのだ?』


「え、何言ってんだ? まだ掘るに決まってるだろ」


『は? なぜだ、一か所穴が開けば落とし穴には使えるのではないのか?』


「誰が一か所だけ掘るなんて言ったんだ。ここの木の周り全部掘るさ」


『ぜ、全部!? どれだけあると思っておるのだ、間に合わないぞ!』


「そんなのはやってみないとわからないぜ」


 クダリは無我夢中で穴を広げる。手首から指先まで土で茶色に染め、指先も腫れてきているが、気にも留めずに土を外に出していく。


「はあっ、よしっ、完成だっ!」


『ほ、本当に時間内で掘れたのか……』


「な、言っただろ」


 クダリは堀った穴を草などを使ってカモフラージュする。


「先生はそろそろ来そうだな……。さて、最後の仕上げだ」


 俺は地面に刺していた火のついた木の棒を一本取り、木に向かって投げる。みるみるうちに、火は木の棒から木に燃え移る。次に落とし穴の近くにある木を全て少し押せば倒れそうなほどに斬っておく。


『剣をそんな使い方する人は初めて見たぞ……』




「――ということだ」


「なるほどな……俺はまんまと罠にはめられたってわけか。だが、もし俺がここに来なかったらどうするつもりだったんだ? それに、燃えている木から脱出する際に俺が必ずしも落とし穴に出るとは限らなかっただろ?」


「まあ、そうだな。確かにあんたが来てくれなかったらこの戦略は成立しなかったな。けど、あんたは一度歩き出したら足を止めるなんて気まぐれな人には見えなかったぜ。それに、あんたがあらかじめ設置していた場所と違う場所に出ても大丈夫だった」


「……なに?」


「なぜなら、どこから出ても落とし穴にはまってくれるように全て穴を掘って木も倒れるようにしておいたんだからな!」


 俺は腰の左の銃を泥だらけになった手で引き抜き、ゴディーの額を狙う。


「……はっはっはっ! こんな無茶苦茶な戦略にかかってしまうとはな! ……見事だ!」


 ゴディーは決して負けを悔しがる様子は見せず、最後は豪快な笑みを浮かべた。それを合図に俺はゴディーの額に銃を撃った。音速を超える弾丸はゴディーの額を貫く。


「……し、試合終了おおおっ! 勝ったのは、まさかの、まさかのクダリくんのパーティーが勝ったあああ!」


 この予想外の勝利に会場の誰もが歓声を上げた。


 ゴディーは光に包まれ、それと同時にこのジャングルも光に包まれて元の一面砂の試合会場に変わる。


『マスター、あんな力任せの戦略で勝ってしまうなんて、我ならもっといい方法を思いついたぞ』


 アイフィは試合に勝ったにも関わらず、ぐちぐちと文句を言う。


「こういうのは勝てばいいんだよ。最後に笑って立っていたやつが勝者だ!」


『そうだな、今のマスターは最高に軍師っぽいぞっ!』


「なんだ、軍師っぽいって軍師じゃないのかよ」


『本物の軍師にはまだまだ遠いな』


 俺は右手を強く握り締め、空に向かって伸ばす。

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