第16話『逃亡』
「くっ!」
クダリは再び腰の銃を抜き、三発撃つ。ゴディーは高速で発射された弾丸を目で見て持ち前の反射神経で避ける。しかし、二発避けたところであと一発を避けるのに体が追い付いていない。
「天竜式一段サンダーボール!」
弾丸の軌道上に雷の小球が現れる。弾丸はそれに当たると爆発を起こして消える。
「おっと、残念だったな。さて、次はどうする?」
ゴディーはまだ余裕に満ちた表情で話す。
『マスター! ここは逃げろっ!』
俺がどうしようかと悩んでいるとアイフィの声が脳内で響き渡る。俺は全力で草を踏み込み、ゴディーに背を向けて急激な加速で逃げ出した。過去最高記録の速度が出たと確信できるほど速く走った。
二階の観客席では試合の様子がモニターに表示される。
「なあ、お前はどっちが勝つと思う?」
「断然、ゴディー先生だろ。学園最強クラスの教師と学園最弱の生徒じゃ話にならねえよ」
「ははっ、そりゃそうだな!」
男子二人の大きな笑い声が辺りに響く。もちろん、会話も全て筒抜けだ。しかし、周りの観客はそれを不快に思うこともなく、同じように笑い出す。会場が盛大な笑いに包まれる中、一人の女性が立つ。
「おい、お前ら! これ以上ふざけたこと言うつもりなら、私の魔法で吹き飛ばしてやろうか?」
時猫族の女性は鋭い目つきで男子生徒を睨む。その男子生徒は彼女のことを知っていた。なぜなら――
「あ、あんたはあの乱暴なパン屋の店主!」
「あ? 誰が乱暴だって?」
ルルは手のひらを男子生徒に向ける。いつでも魔法を撃てるということだ。そんなルルの服の裾を少女が引っ張る。
「お姉ちゃん、それくらいにしよ?」
「……わかったよ、ネネ。お前ら、命拾いしたな」
ネネに対しては天使だが、他の生徒に対しては悪魔へと急変するルルだった。騒がしくしていた男子生徒だけでなく、会場で笑っていた観客は誰一人として笑わずにモニターを見るようになった。
「はあっ、はあっ、なんとか逃げてきたけど、どうするつもりだ?」
『そうだな、まずは状況を整理しようか』
状況、俺以外のみんなは死亡、同じく相手も死亡で一対一という形だが、俺は魔法が使えず、唯一の遠距離攻撃である銃の残弾は一発だ。おそらく、一発を外せば勝利は困難になるだろう。対して、ゴディーはまだ魔法を二回しか使っていない、長期戦は圧倒的に不利だ。だが、カイナとの戦いを見ている限り、銃をただ撃つだけではかわされて終わりだ。
「……なあ、アイフィ。さっき戦った場所覚えてるか?」




