第15話『真の敵』
「諦めろよ、スケイル。さすがにお前も四人を相手には戦えないだろ」
それを聞いたスケイルが笑い出す。
「はっはっはっ、四対一だと、その戦力差でか? あまり、舐めないでいただきたいな!」
「なにっ……?」
スケイルが杖を構える。それに反応して速攻で終わらせようとサリィとリュウカが走り出す。
「天竜式三段ライトニングホワイト!」
「させないっ!」
スケイルが杖を地面に刺すと、そこから円形に黄色の電気が魔方陣を描くように走る。
「「きゃあああ!」」
二人はその場に倒れ、光に包まれて消える。
「サリィ! リュウカ!」
「わかったか、これが一組と五組の違いだよ」
「くそっ……!」
俺は即座に腰の銃に手を伸ばし、スケイルに照準を合わせて打つ。この動作に二秒もかからなかった。だが、スケイルに衝突しようとしたところで謎の電気に弾かれる。
「ほう、警戒していて正解だったな。だが、これで終わりだ。天竜式二段ツインボルト!」
スケイルの杖から太い電気のビームが二本、俺に向かって飛んでくる。何かしようと思うが、一瞬で距離を詰めるビームに対抗する術が思いつかない。
「させないっ! 紅式二段フレイムディスク!」
ビームで右肩と左肩を貫かれようとしたとき、カイナの魔法で火の円盤がビームの進行方向に現れ、ビームに当たると同時に吸い込まれるように吸収した。
「カイナ、サンキュー」
「クダリ、まだ勝負は終わってないわよ。よそ見しないで!」
「了解っ!」
俺は銃を腰の右側にしまい、今度は腰の左にある剣を取り出す。即座に構え、スケイルに横の一閃を放つ。
「はあっ!」
「天竜式――」
「遅いっ!」
スケイルの左腕を斬り飛ばし、腕がジャングルの木にぶつかり、草を血で赤く染めて落ちる。
「ぐっ、腕があああ!」
スケイルは目を見開き、杖を捨てて斬られた左腕を押さえる。
「悪いな、スケイル。ここで終わりだ」
俺はもがき苦しむスケイルの前に立つ。
「くくく…………ここで終わりだと。いや、まだ終わっちゃいない! こっちには、まだ魔法威力のスペシャリストであるゴディー先生がついているんだからなあっ!」
「ゴディー先生って……もしかして、あのときいた……!」
あのとき。スケイルと一緒に入ってきた最後尾の男性、あれが魔法威力の授業で噂のゴディー先生か。一度も魔法威力の授業を受けたことはないから姿さえわからなかったが。
「へへっ、そうだよ。天竜式一段サンダースピア!」
スケイルは魔法を唱える。だが、唱えた対象は俺たちではなく、スケイルは、腹部に手を当て槍状に作られた電撃が自分自身を貫いた。
「お前らではゴディー先生には勝てないがな、はっはっはっ…………」
スケイルは言い終えると光に包まれて消滅した。
「いや、お見事お見事」
スケイルが消えた後、手を叩いて登場する人物が現れた。金の髪、顔に少しだがしわがあり、年齢は四十代くらいだと予想できる。そして、この状況で残っている人物は一人しかいない。
「……あなたが、ゴディー先生ですか」
「いかにも」
お見事と言いながら登場してきたということは、自分のパーティーが襲われ、死ぬまで何もせずに見届けていたということだ。
「あんた、今まで、スケイルとの戦いを見ていたんだよな。だったら、なんで加勢しなかった!」
同じ味方であるはずのスケイルを見捨て、悲しみの表情も見せずに登場してきたこいつを、俺はひどく許せなかった。
「なんでって、スケイルが一人で倒してくれると思って見ていたんだがな。俺は生徒をいたぶる趣味はないからさ」
その言葉は、俺でも嘘だと見抜けるほどわざとらしかった。
「ゴディー先生、その言葉、嘘だろ」
「おや、やはりわかってしまったか。いやあ、最近の若者は勘が鋭いなあっ」
「――無駄口はそこまでにしなさい、紅式四段トリプルライズフレイムバレット!」
カイナが背後に回り、手をゴディーの後頭部に向け魔法を放つ。放たれた三発の炎の弾丸は始めて俺に出会ったときに撃った魔法の強化版だったが、一発一発がはるかに大きくなっている。ゴディーはそれを魔法も使わずに反射神経だけでかわす。かわされた炎の弾丸は奥の木にぶつかると激しい爆発をして消滅した。あのころに比べれば威力も速度も上がっているはずなのに、それをいともたやすく避けるゴディーの反射神経は尋常ではない。
「まだっ! 紅式四段プラスライズフレイムブラスト!」
カイナは引き続き魔法を放つ。ゴディーを包む大爆発が引き起こされる。大量の火と煙でゴディーの姿が良く見えない。
「水連式三段ウォーターネット!」
ゴディーの指をパチンとはじく音が聞こえる。火の中から歩いて出てきたゴディーは水に包まれていた。
「ふう、危ない危ない」
「まだっ……」
「もうやめておけ、四段魔法を二回も使ったんだろ。それ以上使えば魔力が持たないぞ」
カイナの額から汗が流れ落ちる。ゴディーの言うとおりだろう。クダリは魔力がないためよくわからないが、魔力を使いすぎると失神し、魔法が使えなくなったり、最悪の場合は死に至るとまで言われている。
「でもっ……まだっ!」
カイナは必死に立って手のひらをゴディーに向けているが、次第に足が震え始めて最後は崩れ落ちるように倒れる。クダリはすぐに駆け付ける。
「カイナっ!」
「クダリ……ごめん……動けそうに、ない……かも。後は……任せたわ。あなたならきっと……」
カイナは言い終えると光に包まれて消える。
「さあ、どうする? 降参してもいいんだぜ」
ゴディーは余裕に満ちた表情でこちらを見る。




