第11話『渡し物-4』
そして、太陽は沈み、星一つのない暗闇が街を包んだ。生徒の半数以上は汚れ一つないきれいな学生寮で一人一部屋与えられて暮らす。クダリもまたその一員だ。
「マスター、ご飯はまだか?」
だが、他の人と違う点は女神であるアイフィと共に暮らしていることだろう。
アイフィは二人用の小さな木の机に置かれた椅子に座る。アイフィは決してご飯を自分で作ろうとせず、いつもフォークとナイフを両手に持って机を叩いている。まったく、困った女神だ。
「もし、俺がいなくなったらどうするんだ? 餓死でもするんじゃないのか?」
「そこは心配いらない、女神は食べなくても生きられる。ただ、ご飯を食べると嬉しい気持ちになるから食べるのだ」
「なおさら作る気失せるな」
などと言いつつご飯を毎日のように作ってしまうのだから自分の優しさが誇らしく思える。
ご飯を食べ終え、汚れた食器を片付ける。
「あ、そうだ、マスター。実は、我から渡したいものがあるのだ」
「渡したいもの?」
「ひと段落した後でいいからベッドに来てくれないか?」
「……わかった」
渡したいもの、か。アイフィから何か貰うのは初めてだからな、いったい何をくれるのだろうか。
クダリは気持ちが昂り、いそいそと食器を片付け始める。
「で、渡したいものってなんなんだ?」
ベッドに座っているアイフィの横に俺も座る。アイフィはもじもじとしてこっちを見ない。
「おーい、聞いてるのか……?」
「……じ、実は、我の……」
今にも消え入りそうな声で言うので聞き逃さないよう耳を傾ける。
「…………コートを渡したい」
「コート? その紺色のやつか?」
アイフィはこくりと頷き、コートの中から丁寧に折りたたまれた、まったく同じコートを取り出す。
「どうだ、がんばって作ってみたのだが……」
クダリは黒いジャケットを脱いでアイフィに貰った紺のコートを着る。完璧なまでにクダリ用にサイズが調節されており、アイフィのように地面にコートが届く高さだ。
「すごいな、サイズぴったりじゃん。でも、どこで俺のサイズなんて知ったんだ……?」
「…………」
アイフィは目を逸らす。
「……いや、答えろよ」
結局、アイフィは俺の質問には答えず、諦めて寝ることにした。
太陽が顔を出し、小鳥の鳴き声が街に響く。目を覚まし、部屋の天井が目に映る。起きようと体を起こすが、何か重りが乗って動かない。
「……なんだ?」




