第5話 『たったひとつの冴えたやりかた・・・?』
件の場所から30分ほど歩くと開けた場所に出た。
「ここだ」
「うそでしょ・・・・・」
ネネが村だと言い張る場所には焚き火とちょっと休憩出来る程度のものしかなかった。
文明レベル低すぎやしませんかね・・・・
「あの、これだけ?」
「はぁ・・・・上見ろ上」
WOW! https://youtu.be/zqTwOoElxBA
「しゅごい・・・」
ツリーハウスってのかこれ。
木に家がついてる・・・
「オラの村の家はぜ~んぶこうだ」
そーなん? めっちゃいいじゃん。
「そーなん?めっちゃいいじゃん」
思ったことがそのまま出てしまった・・・
俺こういうの好きなんだよね
「んじゃあオラの家行くか おとうとおかあに紹介しないとな」
娘がこれじゃあおとうもおかあもド訛りしてそうだな。
紆余曲折
「ホラ、ここがオラの家だ」
「これどうやって登るんだ?」
ドアまで続く階段やはしごが一切ない。
「どうやってって・・・こうやって、よっと」
おおう、あの犬娘軽く4、5mは跳んだぞ。
「いや、待て待て 人間にその跳躍は無理難題だ」
「ああ、すまんすまん よそ者を見るのは初めてだからぁ」
そう言うと上から縄梯子をなげた。
「ほれ、これで」
縄梯子って結構登るの難しいんだぞ。
「じゃあ、お邪魔しまーす」
挨拶は重要だからな。
にしてもきつい。縄梯子先輩パないっす。
そんな先輩をなんとか攻略して家の中に入ってみると思ったより広い空間が広がっていた。
「そこらへんに掛けといてくれ オラはおとうとおかあを呼んでくる」
ネネに促されソファ?に腰掛ける。
お、固いけど温かい。恐らく木を加工したものに動物の毛皮が貼り付けられているんだろう。
俺、動物の毛アレルギーなんだよな。
なんてことを考えていると、ネネの両親らしき2人が奥から出てきた。
さぁ、どんなとんでも訛りが出てくるのだろうか。
「ああ、これはこれは移転者さん ようこそ! 私ネネの父のトラです」
「母のタマです~」
あれま。
「あ、ご丁寧にどうも 黒鋼です ネネさんが随分訛っていたので・・・意外ですな」
思わず敬語。だって雄っぱいとおっぱいがでかいんだもん。
ネネの乳は両親譲りなのかも・・・
特に親父のものは惚れ惚れするぜ・・・男ならアレくらいないとな。
「ああ、それは・・・娘は訛っているのがかっこいいと思っているんですよ」
「昔私が読み聞かせた続き物の絵本の主人公が大訛りのクセまみれでしたからねぇ~」
WOW・・・
「それは言わねえ約束だんべえよ」
照れてる。
「一人称もオラなんて女の子らしくない・・・・そんなんじゃモテないぞ・・・・?」
親父のその言葉でスッとネネの顔に影が入る。
なにかあるのだろうか。
「オラの人生はモテようがモテなかろうが変わらねえべ」
「「・・・」」
おいおい黙っちゃったよ。っていうか人生ってのは適切なのか。犬生とかじゃないの。
「な、何かあったんですか・・・?」
「あ、いやいや何でもございません! ささ、もう暗くなってきましたし、夕飯にしましょう 母さん!そろそろ準備してくれ」
「はい~」
なーんか釈然としないなあ。
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夕飯と称して出てきたものは肉のカーニバルだった。
肉の謝肉祭。
・・・・w
「こりゃあ・・・すごいですね・・・・」
「ああ、我が民族は野菜類は取りませんからねぇ もしかしてベジタリアンだったりしますか?」
「ああ、いえ 肉は大好物です」
ステーキをおかずに焼き肉を食べるようなメニューだなこれは。
「それは良かった さあ、遠慮せずに食べてください」
胃、もってくれよ!肉3倍だぁ!
うん、おいしい!
「うん、おいしい!」
また思ったことをそのまま口に出してしまった。
この癖直さなきゃなぁ。
「それは良かったです~」
タマさんが微笑んでいる。
この人本当に一児の母か?
「あらあらうふふ これでも一児の母です~」
心を読んできやがった。
「自慢の嫁です」
「いやだもう~」
イチャイチャすんな。これだからリア充は。
そんな桃色空間から目をそらしてネネの方を見てみると、箸・・・・というかフォークが進んでいないようだった。
俺が聞くのもなぁ・・・と思って両親へと目を移すと・・・
「あ~ん」
「もうお父さん~ 恥ずかしいです~」
桃色だった。 はぁ~仕方ない俺が聞くか。
「ネネ、肉嫌いなのか?」
「そういうわけじゃあねえけんど・・・」
「・・・なにか嫌なことでも?」
さっきからネネは暗い。もともとハイテンションなやつじゃないけど、こんなに顔に影が入るようなやつでもない。
「別に・・・」
イケメン主人公くんならここでビシッとかっこいいことを言うのだが・・・
「そうか」
俺はハードボイルドだからな。
そう自分に言い聞かせた。悲しみ1つも癒せない情けない自分から目をそらすように。
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等速で夜は来て、就寝時間となった。
「ささ、寝室はこちらです」
親父に案内された部屋にはでかいベッドのようなものが1つ。
え、マジ?
「あぁ、家の民族はこういう寝方をするんですよ 人間からすると少し不便かもしれませんがご容赦ください」
いや俺はいいけどさ。
「いいのか?ネネは・・・」
ネネが見当たらなかった。
「あれ、母さんネネは?」
「また広場でも行っているんでしょう~」
「そうか では転移者さん、寝ましょうか」
「いや、その前にちょっとネネさんと話してきます」
ずっと暗い顔してたしな。
広場って言うとこの村についたときにあったでかい焚き火のところだろう。
縄梯子を降りて広場に出ると、ネネが一人ベンチに座っていた。
「よぉ」
声を掛けるとこっちを向いた。やはり暗い。あの暗さは、夜だからなんてものじゃないだろう。
「ああ、クロか・・・」
「ずっと暗いじゃねぇか 何かあるのかよ」
「別に・・・・」
「なぁ、俺はよそ者だし お前と会ってまだ時間も経ってない でも、だからこそ、言えることってのもあるんだぜ」
「・・・・・」
ネネは黙り込んでしまった。静かな森のなかに虫の音だけが響く。
しばらくすると、ネネが口を開いた。
「実は私・・・明日結婚するんだ」
驚いた。
「お前・・・普通にしゃべることが出来るのか・・・」
「私をなんだとおもってたんだよ!」
少し笑ってくれた。
「私だって女だ これが普通 親にも隠してきたけどね」
「じゃあなぜ普段はあんな喋り方を・・・?」
「明日結婚するって言ったじゃん?」
「うん、おめでとうだな」
「おめでとうじゃないんだよね~これが」
「・・・嫌なのか・・・・?」
「うん、すごく嫌だね あの喋り方も相手に嫌われるために始めたものの1つだからね」
「そんな回りくどいことをしないで嫌って言えばいいじゃないか」
「それが出来たらどんなに楽か・・・・ 残念ながら、私の結婚は普通の結婚とは違うんだ」
「またどうして」
「うちの民族は一度滅びかけているんだ ずーっとむかしにね」
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昔々、私達は森のなかで暮らしていました。自然の要塞とも言えるとても鬱蒼とした森でした。
そんな立地条件だからか、数百年間私達は外敵も何もなくとてもとても平和に暮らしていました。
しかし、その平和は突然終わります。魔族の出現によって。人間たちは迅速な情報伝達で大陸の就寝まで逃げ延び、対策を講じたことでほとんど死傷者を出さずに撃退しました。 しかし私達は一つの民族であり、当時人間ともほとんど接触していなかったので、魔族の襲撃など知る由もなかったのです。
何も知らない私達は逃げ遅れ、必死の抵抗虚しくほとんどが魔族に殺されました。
『英雄』がいなければ私達は全滅だったでしょう。『英雄』に命を助けられた私達は、強くならなくてはいけないという事に気が付きました。個々の鍛錬はもちろん、人間たちに知恵を授かり、強い武器を作ったりもしました。しかし鍛錬にも限界があります。そこで私達の行き着いた答えは、強い個体と強い個体の交配でした。強い雄が強い雌と子を作れば更に強くなっていけると考えたのです。
効果はてきめんでした。生まれてきた子は強靭かつしなやかで私達史上最高の戦闘能力をもってして生まれてきました。
「ってことでね・・・その風習はずっと続いていて」
「お前がこの民族の中で一番強い雌ってことか」
「そう、なんで私なんだろうね 両親とも並なのに」
「でも相手も強い雄なんだろ?強い雄ってのには惹かれたりしないのか?」
「強い人は好きだよ でも・・・性格がね・・・」
あ~~そっちか・・・
「嫌って言っても良いんだろうけどね ここらへんも平和だし 魔族も人間たちが抑えてくれているからここまで侵攻することもないだろうし」
「でも出来ないと・・・」
「お父さんもお母さんもすごく期待していてくれて・・・民族の皆も楽しみにしてるしね」
これはよくあるパターンですな。
「なぁ、なにか無いのかよ?たったひとつの冴えたやりかた」
俺悲しい顔してる犬ってほっとけないタイプなんだよね。
「あるにはある・・・けど クロには無理だよ」
哀しそうに笑うネネ。
「無理ってまたどうして」
「奴と戦って勝たなきゃだからねぇ」
「そんなに強いのか?」
「ああ、魔法が使えないなら勝ち目なんて無いね」
つ、使えないっす・・・・
「クロは転移者だし、まだ魔法なんて使えないだろう?うちは魔法が使えない代わりに肉弾戦なら人間なんて相手じゃないくらい強いよ そんな民族の最強って言ったら・・・」
勝てるわけがないっすね。
「あ、ああ・・・そうか・・・なんかゴメンな・・・」
「いいよ、クロが悪いわけじゃないし」
何笑ってんだ。何で笑っているんだ。そんな悲しい顔をして。
あーもう見てられない!!!
「ちなみに結婚式はいつあるんだ?」
「明日の午後から夜にかけてあるよ」
いいさ、やってやる。人間様の知恵を舐めるなよ。俺はなぁ前の世界でわんわんを飼っていたんだ。しつけなら任せやがれ。
「さぁ、クロ もう寝ようか」
「ああ、悪いな ちょっと俺は用が出来てよ 先寝ててくれ」
「? そうか・・じゃあ先に寝ているよ おやすみ」
「ああ、おやすみ」
鈍感なやつだ。話の流れ的に分かるだろう普通・・・
まぁいい。個々から俺の独善的行動だからな。誰かに褒められたり褒美がほしいとかではない。ただ自分のこの心のもやもやを取るためにやれるだけやってやる。
ネネの結婚式には短く見積もってもあと12時間はある。やってやるぜ。
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俺は犬を飼っていた。10歳の頃肝臓をやっちまって死んじゃったけどな。ポチ・・・お前を飼っていた知識で一人の女を助けるぜ。
犬は柑橘類の匂いが大の苦手でそれを利用したしつけグッズなどもある。
そして大きい音も苦手で、犬がイタズラをやめないときは新聞紙で床や壁を叩くのが効果抜群である。
さて・・・柑橘類の木と火薬の原材料を探しに行こう。
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森の中を彷徨うこと40分。見つけた。しかも実までなってやがる。
「最高だ・・・」
俺はジジイにもらった鉄の剣で木を倒そうとする。斧じゃないからこりゃ骨が折れるな・・・
しばらく打っていると木が傾き、倒れた。
生っている実をもぎ取る。土を耕して実と土を混ぜる。かんせ~い☆彡 柑橘の臭いがする土~!
さぁゴロゴロタイムだ。
「うおおおお!」
森に漢一匹。ドロドロの土に体をうずめ、必死に身を捩る。
「きもちわりいいいいいいい!!」
だが漢はやめない。
ひとしきり土がつくと、今度は木の皮をはぎ始めた。
細かく裂き、拳に巻きつける。柑橘パンチ!
いいぞ。
そして葉っぱをもぎり取り、柑橘の木の皮で作った縄で体に巻き付けていく。
柑橘人間の出来上がり!
さて、そうしたら火薬だが・・・・作り方しらねーや、てへ☆
というか知っていても作っていたら俺地獄行きじゃん。あぶねーあぶねー。バカでよかった。
と、なるとですね・・・げへへ。
あるじゃんあるじゃん。最高に不快な音がよぉ。




