第八話 12
祐樹は光を背負い、今日もカフェに食事に来た山田さんとカウンターを挟んで話をしていた。
「そっか、山田さんは、告白してくれた男の子じゃなくて、その男の子の地味な友達が好きだったんだね」
「祐樹さん! 地味ってやだぁ」
「でも、告白してくれた子に比べて見劣りがするって言ったじゃん」
「それは、そうですけど」
「でも、山田さんも大変だったね。親友の彼氏に告白されて、勝手にトラブルに巻き込まれるなんて」
「そうですね……」
「あれからどう? もうクリニックには通ってないんでしょ?」
「はい。芳子先生がクリニックは卒業していいって言ってくださったんです」
「そうか! 良かったね!」
「はい」
「あ、ごめん、話を元に戻すけど、それで、結局、彼には告白してないの?」
「ええ」
「毎朝会うようになったんだったら、告白してみればいいのに」
「えー、昔のことだし、私のことは忘れてますよ」
「だって、山田さん、高校生の時の話だから、二年前でしょ?」
「そうですけど……」
「二年前って、ついこの間じゃん」
「そうですかぁ」
「そうだよ」
三日と空けず、祐樹のカフェに通ってくる山田さんと祐樹は、いつしか自分の恋愛話を祐樹に話すような仲になっていた。
「電車の駅で毎朝会うんでしょ?」
「はい」
「ためらってないでGO!だよ」
「……」
「こんな機会は、もしかしたらそうそうないことかもしれないんだよ。彼が大学を卒業したら、もうこの街にはいないかもしれない。気が付いた時は、毎朝会ってた彼はもうそこにはいないかもしれないし、伝えたいことがあっても、もう二度と伝えられないかもしれないんだ」
「……」
「山田さん、自分が傷つくのが恐いんだと思うけど、人生なんて経験してなんぼのもんでしょ。いっぱい経験したもん勝ちなんだよ。そりゃ、山田さんは、今まで人よりすごく悩んで苦しんだから病気にもなったんだろうけど、そこまで悩んだことも自分にとって良かった思えるようになる日がきっといつか来るんじゃないかな。だって、自分が経験したみたいな悲しい思いを人にはして欲しくないと思うでしょ?」
「そうですね。それはそう思います」
「そう思うってことは、山田さんが人に対して優しい人になれたってことだよ。それって、素晴らしいことじゃない? 告白したら、失恋するかもしれないし、成就するかもしれない。どっちにしろ、その経験は山田さんにとって貴重なものになると思うよ」
祐樹がそう山田さんに言うと、山田さんは笑顔になった。
「そうですね。ほんとにそうだと思います」
祐樹も山田さんの顔を見て微笑んだ。そして山田さんは、「やっぱり私は彼が好きなんです。だから、決心が着いたら、思い切って彼に告白してみます、結果がどうであろうと」と言った。




