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トワイライト 第三版  作者: 早瀬 薫


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第八話 5

 坂元俊輔と金石裕太郎の百円均一の八百屋は、無事開店にこぎつけ、多くの客で賑わっていた。八百屋新規出店に基づく商店街あげての協賛セールということで、商店街のみんなで駅前に立ち、チラシを配ったり、新聞にも折り込み広告を入れたりしたのが功を奏したのかもしれない。どの店にもこの商店街の目玉商品である百円の商品が置かれ、早苗おばちゃんの店には、百円の靴下やハンカチ、祐樹の店には、百円のコーヒーや紅茶を提供することになった。百円の商品目当てで来店し、他の商品も買っていく客が多かったので、戦略として百円の商品は大当たりだった。

 祐樹のカフェの隣もちょうど空き店舗になっていたが、そこに目を付けた美帆は、八百屋開店に合わせて、花屋を開店させていた。都内の事務所は縮小して支店にし、本社を商店街に移転させたのだった。アーケードの真ん中には、一定の間隔を置いてベンチが置かれ、ベンチとベンチの間には、花や木のプランターが置かれた。商店街の要請に従って、美帆の店が置いたものだった。アーケードのちょうど真ん中にはコミュニティ広場が作られ、そこにもベンチが置かれた。広場のベンチは、美大生が作った物で、様々な形をした面白いものだった。今日は、コミュニティ広場では、弦楽四重奏のコンサートが行われ、来週は芸人による大道芸が行われる予定で、今後も様々なイベントが催されることになっていた。

 商店街は久しぶりに大勢の客で賑わっていた。その後も商店街の景気は上々だった。活気づいてきた商店街の評判を聞きつけたのか、近いうちに、他の空き店舗にも雑貨店や靴屋や飲食店が新しく入店する予定だという。それらの店と商店街のみんなは話し合って、開店日を来月の十日にし、今後、商店街で、毎月十が付く日に十日市という名のセールを大々的に開催することに決めた。十日市には、客寄せのために屋台も毎回出すことにした。すると、あれだけ閑古鳥が鳴いていた商店街は活気を帯び、復活した商店街の奇跡ということで、たちまち巷で話題になり、テレビのバラエティー番組の取材も受けるような事態になっていた。「うちの商店街に是非取材に来て欲しい」とテレビ局のプロデューサーに依頼したのは美帆で、勿論その番組のプロデューサーは隼人ではあったのだが……。


 愛川哲也は、間の悪いことに、そのテレビのバラエティー番組を休日の自宅で偶然見ていた。映像を見た彼は、自分の思惑に反して、商店街は廃れるどころか、以前よりも活気づいている様に苛立ち、「畜生!」と思わず叫んでいた。愛川哲也は、テレビのスイッチを切り、リモコンを無造作にテーブルの上に投げ出した。そして、妻に「おい! 酒を持って来い!」と命令した。しかし、返事はない。彼は、妻が出て行ったことを束の間忘れていたのである。愛川哲也は、「クソッ!」と叫び、空のグラスを床に投げつけ粉々にした。


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