第七話 10
僕は、白い部屋の真ん中に座って瞑想していた。頭の中には色んな記憶がぐるぐると渦巻いていた。ついこの間のことを思い出していたかと思えば、高校生に帰ったり、幼児に帰ったり、かと思えば、次には結婚直後に帰ったり、また次には中学生に帰ったりと、時間の流れがおかしくなっていた。僕は急に気分が悪くなり、思わず目を閉じ深呼吸していた。そして、暫くの間、目を閉じていて、随分長い間目を閉じていたなと思って時間を確かめると、さっきから一分しか経っていない。かと思えば、一瞬だけ目を閉じて、また時間を確かめると、今度は一時間も経っているのだった。時間の流れがおかしくなっているというより、自分自身の頭の中が大混乱に陥っているようだった。
そのうち、この間と同じように、優菜や祐樹や美帆や祐樹の父母や芳子や渉さんや福田の親父や早苗おばさんが現れ、また口々に同じことを叫び始めた。
「どうしてこんなことに?」
「治ると思っていたのに!」
「もう一度元気な顔を見せてくれ!」
「本当にもう治らないの?」
「亮君、目を覚まして!」
「だめだ、心臓が止まっている」
「まだ、身体は温かいのに……」
「聞こえてるんだろ! 僕だよ! 返事をしろ!」
「亮ちゃん! だめ! 私を置いて行かないで!」
そして、また僕は彼らに「僕はここにいる!」と力の限り叫んでいた。これから、また老婆に罵倒されるまで、この間と同じ記憶が繰り返されるのだろう、そう思っていたのに、突然、全く違う映像が僕の目の前に現れた。




