第七話 7
そんな会話をして、僕はコロッケの代金を福田の親父に払うと自宅へ向かった。帰宅途中、いつものように公園の前を通ると、公園の中から「はっ! はっ! はっ!」と規則正しい大きな掛け声が聞こえてきた。何事だろう?と思って、目を凝らして声が聞こえてくるほうを見たら、どうやら誰かが身体を鍛えているようだった。一番背の高い鉄棒に太い紐を掛けて、何度も身体を捻りながら、その紐を背中越しに引っ張っている。しかも、その人物は柔道着を着ていた。もしかして?と思って近付いてみたら、やっぱり芳子だった。僕が彼女のすぐ傍に突っ立って、口を開けてその様子を見学していると、芳子は僕に気付き、「押忍!」と言ったので、僕も慌てて「押忍!」と返した。
「芳子さん、もしかして外で鍛えるようにしたの?」
「いや、この間、渉を投げ飛ばしたら、母に叱られてね。家で柔道がやりにくくなったのよ」
「マジでっ!? 渉さん、何やったんだよ!?」
「……何もやってない。私が勘違いしただけ」
「え? 何を勘違いしたの?」
「い、いや、あの……」
「そういえば、この間、クリニックに行っていいかと電話したら、それどころじゃないって怒ってただろ? あの時?」
「うん、まぁ、そうなんだけど、お願いだから、深く追求しないでくれる? それより、この間、亮と祐樹が二人で飲みに行って、祐樹がボロボロになって返ってきたんだけど、あんた達何かあったの?」
「何かあったといえばあったんだろうけど、なんにもないといえばなんにもない。殴ったのは俺じゃないから。でも、なんにも覚えてないというのは、罪作りなことなんだなと思った」
「もしかして、優菜ちゃんのことで揉めたの?」
「……」
「亮、もし良かったら、私も時間があるし、今から催眠療法やる?」
芳子にそう言われたので、彼女の好意に素直に甘えることにして、僕はまたクリニックのベッドに横たわった。




