第七話 5
美帆の会社を出た後、僕は、電車に乗り地元の駅に到着すると、歩いて自宅に向かっていた。急ぎの仕事が入っていなかったので、今日はもう工房へは戻らず、そのまま帰宅するつもりだった。商店街を抜ける時、前方から坂元俊輔達が歩いてきた。僕は「おい、話があるんだ!」と彼らを慌てて呼び止めた。そして、商店街の会長の本郷のおじさんや角田も呼び寄せ、アジトで六人で向き合って話し込んでいた。
「え? なんだって? 愛川が地上げ屋になって、この商店街に嫌がらせをしてるだって?」
坂元は驚いていた。他の二人もそうだった。
「だからって、こっちが相手に何か出来る訳じゃない。あっちが何か仕掛けてきたら抵抗するだけだ。とにかく、この商店街は老朽化してボロボロで、空き店舗も増えているから、商店街が盛り上がるようなことを考えたいんだ。百円均一の八百屋をやるんだろ? それ、いい考えじゃないか。他の店にも通用するような良いアイディアがあれば教えて欲しいんだが……」
僕がそう言うと、坂元も金石も山本も腕を組んで考え始めた。
「あ、こういうのはどう? 居心地が良い場所だったり、楽しい場所だったりするところを作るんだよ。お店って何度でも訪れたいと思わせることが大事だと思うんだ。百円均一というのは、値段が安いということが魅力だと思うんだけど、気持ち良いとか楽しいも大事だと思うんだよね」
金石が言った。すると、山本が金石に訊ねた。
「例えば?」
「例えば、アーケードの天井をガラス張りにして木を植える。ベンチもあらゆるところに置いて、休憩スペースを作る」
「ああ、それ、いいね!」
本郷のおじさんが言った。
「美大生の作品を展示して、商店街全体をアートな街にする」
「他には?」
「これらは常設してるけど、不定期で、屋台、コスプレ、イルミネーション、ほおずき市、朝顔市、ゆかた祭りをやる」
「アーケードの真ん中にコミュニティ広場を作って、コンサートをやるとかは? ピアノコンサートや弦楽四重奏、アカペラやアイドルのコンサートもいいと思う」
「おー、いいね、いいね!」
「なんだか楽しくなって来た!」
みんなで話し合って盛り上がっていたら、角田がポツリと言った。
「でも、百円均一っていいと思うんですよね。店によって売ってるものが違うから、全商品は無理だとは思うけど、『どの店でも百円の商品がある商店街』を売りにしたら、反響があると思うんですよ」
「そうだな! お前、良いこと言うな!」
僕は、そう叫ぶと角田の背中をボンッと叩いた。そして、各自出来ることをさっそく明日から始めることにした。そして、角田を商店街を地上げ屋から守るガードマンとして商店街から雇って貰えないかと本郷のおじさんに打診したら、本郷のおじさんは「よっしゃ、わかった。早急にみんなに話す!」と快く引き受けてくれたのだった。




