第四話 10
次の日の朝、出来上がったジュエリーを配達するため、僕は助手席に優菜を乗せ、車で取引先に向かおうとしていた。優菜の取引先も偶然近いということで、途中まで同乗することになった。工房の裏手にある車庫から車を出し、いざ出発しようとしたら、また角田圭吾から電話が掛かって来た。
「亮さん、どこにいるんですか? 俺、アジトでずっと待ってるんですけど」
「あ! ごめん、忘れてた! 仕事が済んだら必ず行くから」
「今朝の商店街の様子を見ましたか? 凄いことになっててびっくりしましたよ! 早くなんとかしたほうがいいんじゃないですか?」
「どうかしたのか?」
「悪口が書かれたビラが一面に貼られてるんです! 営業妨害でしょ!」
角田にそう言われて、僕は、アーケードに面している店の表を慌てて見に行った。すると、カフェのウィンドウ一面に『ゴキブリ入りのコーヒーを出すだなんて大した度胸だな!』とか『ケーキにカビが生えてたぞ!』とか悪口の書かれたビラが貼られていた。商店街の他の店も同様だった。僕に着いて来た優菜もびっくりしてビラを見つめている。商店街を見回すと、アーケードの向こうの方でビラを貼っている黒づくめの男二人を見付けた。僕は「おらああああああ」と叫びながら、そいつらに向かって走り、飛び蹴りして倒した。恐れをなした男二人は「わああああああ」と叫びながら走って逃げて行った。
僕と優菜は、大急ぎでビラを剥がし終わると、優菜を急かして車に乗り、配達に向かった。イライラしていた。嫌がらせの主犯格は、きっとあの愛川哲也だろうと思っていた。早く何とかしなければ、とんでもないことが起こるような気がしていた。
「亮ちゃん、どうしよう……、大丈夫かな……」
「心配するな、俺がなんとかするから」
「なんとかするって言ったって……」
「とにかく、商店街のみんなと対策を考えるから」
「うん、そのほうがいいね……」
取引先に向かう途中、前方を走る白いワンボックスカーが目に入った。僕は無意識にその白いワンボックスカーの後を追い始めていた。すると、助手席の優菜が「亮ちゃん、何をしてるの!」と僕に声を掛けた。僕は返答に困り、ただ「えっ?」と言葉を発した。
「亮ちゃん、あの白いワンボックスカーは、亮ちゃんが捜してるワンボックスカーじゃないと思う」
「……」
「亮ちゃんが捜してるのは、本当は白いワンボックスカーじゃなくて、別の物だと私は知ってる」
優菜はそう言った。しかし、優菜にそう言われて、僕の頭の中は余計に混乱していた。




