第四話 2
仕事を終えて帰宅したら、優菜が居間のソファーで眠りこけていた。昨夜は徹夜の仕事だったし、きっと疲れているんだろうなと思って、優菜にタオルケットを掛けるとそのまま寝かせておいた。僕は、居間の隣りの台所で冷蔵庫の中から食材を取り出し、カレーを作っていた。すると、優菜は「ああ、いい匂い」と伸びをしながら目覚めた。そして、僕が夕飯を作っているのを発見して、「亮ちゃん、ありがとう!」と満面の笑みで言った。そして、カレーが出来上がると、二人で食卓に向かい合って食べていた。
「昨日は大変だったんだろ?」
「うん、もうほんとーっに大変だった! でもね、今日から始まったイベントが大盛り上がりで、お客さんもいっぱい入って喜んでくれてたから、なんか救われた感じ」
「そうか、良かったな」
「それはいいんだけどね、昨日、じゃなくて、今朝だっけ? 今朝ね、大変なことが起こったのよ!」
「え、なにが?」
「亮ちゃんも、聞いてびっくりよ!」
優菜はそう言うと、急遽、降って湧いたテレビ局の仕事で、中学の時の同級生の菊池隼人に偶然出逢ったことを半ば興奮気味で僕に語ったのだった。
「えーっ、アイツ、東京にいんのかよ!」
「そうなの! 私、海外にいるんだとばっかり思ってたからびっくりした」
「アイツ、高校二年の時は、留学して、外交官になるって言ってたぜ、たしか……」
「そう。海外で仕事をするんだと、私も思ってた」
「そうだよな」
「でも、美帆と菊池君があんなことになったから、その後、音信不通になっちゃってて……」
「あんなこと?」
「そっか、亮ちゃん、高校二年以降の記憶がないもんね」
「うん」
「遠距離で付き合ってたけど、別れちゃったのよ。でも、もう時効だと思ったから、美帆にも菊池君が東京にいることをさっき電話で教えてあげたのよ。そしたら美帆もびっくりしてたけど、やっぱりなんだかそこまで喜んでなかった」
「そうなのか……」
優菜と昨夜そんな話をしたのだが、隼人の話のせいでダビデの森の箱紛失の謎を優菜に問うことなど、すっかりどこかにぶっ飛んでしまっていた。翌日、祐樹に隼人のことを話すと、祐樹は一人で喜びまくり、優菜から教えて貰った隼人の携帯に、「今度、男三人で飲もう」とさっそくメッセージを送っていた。




