第三話 6
それから数日後、僕は再び、芳子のクリニックのベッドに横たわっていた。
「じゃあ高校生の時に、祐樹と二人で原付に乗ってて、海に落ちたところまでは覚えてるのね」
「うん」
「そこから先は、全然思い出せてないの?」
「うん、全然何にも」
「そうか……、じゃあ、今日は高校生に戻ろうか」
「うん」
芳子は、この間と同じようにメトロノームを鳴らし始めると、「これから、高校二年生の五月まで遡ります。リラックスして目を閉じて」と言った。僕は、芳子に言われるがままに無言で目を閉じた。
芳子の導きに従って、海に落ちる直前まで意識が辿り着いた。そして、僕も祐樹も海に落ち、僕は案外簡単に海から埠頭によじ登れたが、泳げない祐樹は海の中で一人でパニックに陥っていた。仕方がないので、僕はまた海に飛び込み、祐樹を助け上げる羽目になった。そこまでは良かったのだが、その後が酷かった。盗んだ原付は海に沈んでしまったし、母や祐樹の父にこっぴどく怒られ、その後、原付を弁償するために、暇さえあればバイトをして金を稼いでいた。こんなことになるなら、最初から金を貯めて自分の原付を買えば良かったと後悔していた。一回乗っただけでダメになってしまうなんて、高い買い物をして損したと思った。




