123/133
最終話 11
病院の洗濯室で洗濯をしていた時、優菜の携帯が鳴った。電話の相手は、山本拓朗に紹介された探偵事務所の矢沢直樹という調査員だった。
「野崎さんですか?」
「はい、野崎です」
「あの、お身体は大丈夫ですか?」
「ええ、私はもう大丈夫です。でも、主人が……」
「ご主人がどうかされたんですか?」
「ええ、でも、どうぞお話ください」
「調査の中間報告です」
「あ、はい」
「それがですね、ちょっと難航しています」
「そうなんですか……」
「良いお話が出来ずに申し訳ありません」
「い、いえ……」
「でも、手掛かりは掴めそうなんです。だから、もう少し待っていただけますか?」
「あ、あの、無理を承知で言います! だめならだめでもいいんです。それは、矢沢さんのせいじゃないですから。でも、出来るだけ早く結果が知りたいんです。なんだか時間がないような気がしているんです」
「そうですか……、分かりました。全力を尽くします」
「どうか、よろしくお願い致します」
「承知しました」
そんなやり取りをして、優菜は携帯を切った。