最終話 5
僕は小学生になり、坂元俊輔と教室の中で喧嘩をしている。すると金石裕太郎と山本拓朗も加わって、三対一の喧嘩になった。僕は彼らに負けじと頑張っていたが、暫くして担任の先生がやって来て、喧嘩を止めてくれたので内心ほっとしていた。優菜が僕に近寄って来て「桜木君が先生に告げ口してくれたのよ」と僕に耳打ちしてくれた。
学校から祐樹と二人で連れ立って帰っていると、「お前、生意気なんだよ!」といちゃもんを付けられ、上級生三人に絡まれていた。しかもそのうちの一人が祐樹に向かって、「お前、教会の前で捨てられてたんだってな。どうりで胡散臭いヤツだと思ったぜ。捨て子だったからなんだな」と言った。僕は驚いて祐樹を振り返った。祐樹は今にも泣き出しそうな顔をしている。僕はその顔を見て、本当のことなんだと悟った。でも、捨て子だからと言ってそれがなんだというのだ? 祐樹は良い子じゃないか! 祐樹の泣き顔を見ていたら、急に頭に血が上り、僕は一人で上級生に突っかかっていった。しかし、流石の僕も上級生三人を相手に勝てる気がしていなかった。それでも僕は、彼らに向かっていった。すると、そばを通りかかった坂元俊輔と金石裕太郎と山本拓朗が僕に加勢してくれて、僕たちは四人で上級生三人と戦っていた。
僕は、今日も福田の親父のコロッケを盗んで食べようとしていた。しかし、祐樹が「今日はちゃんとお小遣いを持ってきたから」と財布を取り出し、福田の親父に金を払ってくれた。福田の親父は、僕たちに揚げたてのコロッケをくれたが、渡された紙袋の中を見ると、コロッケは一個ではなく二個入っていた。祐樹の紙袋の中にもやっぱり二個入っている。「おっちゃん、間違えてるよ」と僕が言うと、福田の親父は「今日はいいんだよ。サービス、サービス」と言って笑った。
僕は、用事があって出掛けている太蔵爺ちゃんの代わりに、駄菓子屋で店番をしていた。いつも駄菓子をくすねていたので、太蔵爺ちゃんが怒って僕に店番をしろと言い付けたのだった。僕は駄菓子をくすねることなく、きちんと店番をしていた。太蔵爺ちゃんは帰ってきて、「ちゃんと仕事をしていたか?」と僕に訊ねると、「うん! ちゃんと仕事した!」と僕は答えた。すると、太蔵爺ちゃんは笑顔になり、「持って帰って、母ちゃんと食べるんだぞ」と寿司折を二つくれた。
学校帰り、僕は早苗おばちゃんに呼び止められ、「これ、お母さんに渡して」と紙袋を託された。家に帰って母に渡した。紙袋の中には、母に似合いそうなブラウスとスカートが入っていた。母は中に入っていた早苗おばちゃんからの手紙を読んで泣いていた。「売れの残りの服だけど、良かったら着てね」と書いてあった。母は、そのブラウスとスカートを着て、笑顔で参観日に来てくれた。