第九話 14
日曜日になり、僕は、朝食の後片付け、洗濯、掃除を済ませ、昼飯を食べに祐樹のカフェへ向かった。日曜のカフェは大勢の人でごった返していた。芳子や光を背負った渉さんまでもがカフェを手伝っていた。優雅に休日のカフェでランチを食べようと思っていたのに、それどころではなく、僕までカフェを手伝う羽目になってしまった。途中で、美帆と隼人もカフェに訪れたが、美帆はカフェの混雑ぶりを見て目を丸くし、席を用意しようとしている渉さんに、「福田のおじさんのところで、お弁当を買うからいいです。あちらのお客さんを案内してあげてください」と言い、カフェの外で待っている客を指差した。そして、笑顔で二人は帰って行った。
午後三時を過ぎて漸く客足が引き、ほっと一息吐いていたのだが、祐樹が「光を連れて、何か買って公園でご飯を食べてくるよ」と言い、新しく店長として雇い入れた梶田さんという女性に店を任せて、光をベビーカーに乗せ、のんちゃんの手を引き、散歩に出てしまった。僕と芳子と渉さんは、奥の台所で、三人で遅めのランチをとっていた。
「渉と祐樹、どっちが光の父親なんだか分かんないわ」
「ほんとに祐樹君には感謝だな」
「祐樹はのんちゃんと光を愛してるんだよ」
「まぁ、それは間違いないわね」
「しかし、これだけカフェが忙しいと、子供の面倒を祐樹君にお願いするのも考えなくちゃいけないな」
「そうね、今は光はまだ歩けないからいいけど、歩き始めたら大変だわ。私も仕事をセーブするから、あなたもセーブして交代で面倒をみなきゃいけないわね」
「そうだね」
「まぁ、和室を子供部屋にしたら、みんながしょちゅう通るから、のんちゃんも光も退屈しなくていいかも。あと、クリニックの玄関だけど、カフェを通らずに外からクリニックに直接入れるようにしなきゃ」
「えーっ、カフェを通るから、患者さんが気軽にコーヒーを飲めて良かったのに……。でも、仕方ないかな」
僕がそう言うと、芳子は「そうよねぇ。でも、混雑しすぎるカフェを通らなきゃいけないのは、患者さんにも負担だと思うの」と言ったので、僕も深く頷いたのだった。
その後、僕も祐樹とのんちゃん達を捜しに、公園へ向かっていた。芳子に託された子供用のジュースと祐樹と僕のためのカフェラテを入れた袋を持ち、二人の散歩に僕も合流させて貰おうと思っていた。そして、優菜が、ダビデの森の箱を無事掘り返したことを彼に伝えるつもりだった。祐樹の願いもきっと叶うだろうということも……。