第一話 1
2017年7月に投稿した「トワイライト」の第三版です。
出来上がりが気に入らず、またもや書き直しました。
新たな登場人物は亮の子分、角田圭吾、
芳子の第二子、光です。
太蔵爺ちゃんの設定も変更しています。
が、しかし、まだ直したりないような……。
楽しんで読んでくださったら幸いです。
「八月十一日、午後三時十二分、ご臨終です」
医師からそう宣告され、僕を取り囲んでいた人達から、わっと泣き声が漏れた。僕にしがみ付き泣いている者もいる。どうやら僕は、自分の身体から幽体離脱しているらしい。僕は、その様子を病室の天井近くまで浮き上がって見下ろしていた。
病室にいる人達は嘆き悲しんでいた。僕も、悲しい気持ちでいっぱいだった。しかし、僕は僕の意思に反して、病室を出てどんどん空高く昇っていき、遂に地球の外に出た。気付けば、僕は何故だか、幸せな気分になっていた。重い鎧を脱ぎ捨てて自由になったような気がしていたのだ。そして、青い地球を見て満足し、今度はもっと遠くまで行きたいと火星に顔を向け、手足を伸ばして飛ぼうとした。しかし、急にぎゅんっと身体が引き戻された。自分の身体をよく観察してみたら、両手両足に銀色の糸が結び付けられている。その糸は、どうやら地球に残されたままになっている自分の身体の本体と繋がっているようだった。僕は銀色の糸を切って自由になろうとジタバタしてみた。しかし、どうあがいても糸は頑丈で切れない。そのうち、手足に結び付けられていた銀色の糸は物凄い勢いでするすると縮み、気が付けば、何にもない広い四角い白い部屋の真ん中に置かれた椅子に一人で座らされていた。
椅子に座っていると、老婆の声が聞こえてきた。声の主の老婆は、目の前に置かれた椅子に向かい合って座っている。すぐそこにいるはずなのに、何故だか老婆の顔がぼやけて良く見えない。しかめっ面をしていると、老婆は僕に向かって突然叫んだ。
「お前の成績は十点満点中、わずかに一点! お前は、何故こんなに成績が悪いのかも分かってはおるまい。何のために人間は生きているのか、よく考えなおせ。こんな成績では死なせるわけにはいかぬ。もう一度やり直して来い!」
老婆がそう叫んだと同時に、僕は身体全体に重力を感じ、身動きが取れなくなった。どうやら、僕はベッドの上に寝ている身体に戻ったらしい。恐る恐る目を開けてみた。すると、目を開けた瞬間、それに気付いた人たちは、僕の顔を急いで覗き込み、さっきよりももっと大声で泣いた。
なんのことはない、死にかけていた僕は蘇生したのだった。