<Ⅰ>
翌朝、私が昨日採ってこられなかった分を採ってくる、と言って、黒は出かけて行った。もちろん、私が外へ出るのは絶対にだめだと何度も念を押されたが。
黒がどこかへ行ったことを確かめると、私はこっそりと教会跡を抜け出した。
瓦礫の山を越え、女の人がいるところへ目指す。
「今日も来たよ?」
いくつかの瓦礫の山を越え、私が女の人にそう言うと、女の人はおはよう、と言った。
「さて、今日話すのは、昨日話した時から二十年ぐらいたった後のお話ね」
私が近くの岩の上に座ると、女の人はお話を始めた。
私は黙って、ひたすらに聞く。
「二十年後、明香と蛍は結婚して、二人の子供を授かったの。お姉ちゃんのほうが『紫苑』っていう名前で、弟のほうが『蕨』っていう名前なんだよね。あと、スギとカエデの間にも、一人『桜』っていう女の子が生まれた」
「……あ、一つだけいい?」
女の人の説明を聞いていて、前からずっと疑問に思っていたことを思い出した。
「いいけど、どうしたの?」
ここで質問されると思っていなかったのだろうか、女の人が不思議そうな声を出す。
「いや、今までずっと疑問に思ってたんだけど……」
私はそういうと、一息おいてからこう言った。
「赤ちゃんって、どこから来るの?」
……しばらく、風の音しか聞こえなかった。
「どうしたの? なんで急に黙るの?」
「え……ええとね?」
私がせかすと、女の人は今までで一番困ったような声を出す。
「じ、実はね……」
「実は?」
言葉を選ぶようにして慎重に話していく女の人がもどかしくて、私はさらにせかした。
「わ、私も、よくは知らないんだ……」
その言葉に、私はがっくりと肩を落とす。
「そっか……」
「ごめんね?」
女の人は申し訳なさそうな声を出した後、気を取り直して、お話を再開した。
「それで、その紫苑っていう女の子が高校一年生の時にね……」




