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AR  作者: 青柳藜
chapter Eleven After the war.
91/147

<Ⅲ>

 この騒動の後、壊滅的な被害を受けた全世界、特にMIDORIに政治運用を任せていた世界を代表するような先進国は、すぐさま臨時政府を作り上げ、「人工知能・兵器分離条約」を締結、すべての国でこれを承認した。

 特に日本では、インフラの再生、ネットワークセキュリティの強化、そしてMIDORIの解体が行われた。

 このハッキング騒動を起こしたやつは、MIDORIの元職員の「リセクティエスタ」とかいうやつで、ARGCとWMeを悪用し、そこからハッキングをしたとのこと。その人は、アメリカの彼の実家で首を切って自殺していたところを、近所の人に発見されたらしい。彼の犯行動機などは、全て闇の中のものだった。

 ハッキング時にWMeをやっていた人は、ハッキング時の電流の負荷の影響で脳の組織を焼き切られたことで、死亡したという報告も上がった。

 これによりWMeは回収、ARGCの製作を主にやっていた会社は賠償金のおかげで破産した。まぁ、もともと重役級の人たちがみんなこの騒動に巻き込まれて死んでいたので、その賠償金はすべて国が肩代わりすることになったのだが。

 11月ぐらいになって、臨時政府によって被害者名簿が作られた。半分以上の人が「行方不明」の欄の中に入っていて、「死者」の中にはほとんどの人がいなかった。蛍曰く、死者であると断定できるもの、(例えば死体など)がなければ、死者としては数えられないらしい。この場合、MIDORIが世界中でミサイルをぶっ放したようで、先進国の五分の一の面積が焦土と化していることを踏まえると、ほとんどの死者は「行方不明者」として数えられるだろう。

 私の家族と、結衣などの友達たちの名前は、一人残らず「行方不明者」の中に入っていた。

 12月ぐらいになってようやく背中の傷も治ってきて、左足がない生活にも慣れ、私はリハビリを始めた。

 そのころになって、ようやく電気が復活、続いて水道、ガスと、インフラもどんどん治っていった(それまでは活版印刷を使った大昔の印刷方法でニュース、求人などを行っていた)。

 テレビのニュースも復活しはじめ、MIDORIの暴走を止めたのは河内守というMIDORIの開発者で、命と引き換えに世界を救った、ヒーローものの物語のようなお話が真実となっていた。蛍やスギさん、アネモネちゃん、しょくぶつえんという単語は一切出てこなかった。

 スギさん曰く、僕らみたいなのが表に出ちゃいけない、らしい。

「現実ってのは基本的には知らされない。僕らのような集団は日の光の下に出てはいけないし、出たところで灰になって踏まれるだけさ。まぁ、僕らがこの美談を作って警察側に売りとばしたっていうのもあるんだけどね?」

 スギさんはそう言って、大きめのジュラルミンケースを右手で持ち上げる。

 今はただの紙束でしかないが、経済が復活すればまた使えるようになる。それまでそのケースは置いておくらしい。

 電力が復活してから、蛍はずっと部屋にこもり、アネモネちゃんを救い出すプログラムの開発をしている。

 私はアヤメちゃんにハッキングに必要なコンピューターの知識を教えてもらいつつ、全く変わってしまった日常を生き続けた。


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