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<Ⅰ>
「出席を取ります。瀬戸内明香さん」
「……はい」
青空の下、私は柏原先生の点呼を受けた。
「……こんな状況なのに、ここに来れるなんて、偉いな」
柏原先生はそう言うと、車いすに座った私の頭を、やさしくなでてくれた。
私は、両目から涙がこぼれるのを、抑えることができなかった。
柏原先生はそんな私の様子をそっと見た後、私が泣き止むのを待って、口を開いた。
「これより、高校入学式を執り行います」
そんな柏原先生の声が、周りに積まれたがれきのせいで、私たち二人だけしかいない校庭に反響した。




