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AR  作者: 青柳藜
chapter Ten Anchor.
86/147

<Ⅹ>

 音が響いても、私に伝わってきたのは背中を強く押されたような感覚だけだった。

 恐る恐る、目を開けてみる。

 そこには、駆動ランプの消えた金属塊が突っ立ていた。

 ――特別に、二十秒まで伸ばしてやる。

 そんな蛍の声が聞こえたような気がして、私は、今自分が置かれている立場を思い出した。

 顔を上げると、あと三メートルもあるかないかのところに、太いケーブルとそれがつながる白い箱が置いてあった。

 私はすぐさま後ろのレーザーカッターに手を伸ばすと、発射口をケーブルに向けた。

 電源を入れ、トリガーを引く。


 しかし、レーザーは出なかった。

 先ほど受けた背中の衝撃を思い出す。

 きっと、あれで機械が壊れたのだ。

 それが分かった瞬間、私の中を絶望が埋め尽くした。

 本当に、これ以上は方法がない。もう、どうしようもない。


 ……本当に?


 私は、必死に考えた。こうなっても、まだ逃げる道はないのか。ひたすらに考えた。

「……できるかどうかはわからないけど、やるしかないよね」

 不可能に近いが、一つだけ、方法はあった。

 私は白い箱まで這って進むと、そこから多い箱をよじ登り、右手で体を支え左手でキーボードをいじった。

「アクセスしてください……」

 画面に青い背景で、そんな白い文字が映し出される。

 昨日、無理矢理身に着けた技術で、私はその暗号を解いていく。

 残り時間、二秒。

「アクセスされました。全ての電源回路を遮断します。Y/N」

 残り一秒で、私は「Y」を押した。

 その瞬間。

 後ろで乾いた音がしたと同時に、私は、とん、と背中が強くたたかれたような、そんな感じの衝撃を受けた。

 背中から、熱い何かが入り込んでくる感覚がある。

 それはすぐさま、焼かれたような痛みに変わり、私の意識はその痛みに刈り取られた。


 最後、画面には「全ての電源が遮断されました。一秒後には全てのコンピューターの動作が停止し、シャットダウンされます」と、映し出されていた。

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