<Ⅹ>
音が響いても、私に伝わってきたのは背中を強く押されたような感覚だけだった。
恐る恐る、目を開けてみる。
そこには、駆動ランプの消えた金属塊が突っ立ていた。
――特別に、二十秒まで伸ばしてやる。
そんな蛍の声が聞こえたような気がして、私は、今自分が置かれている立場を思い出した。
顔を上げると、あと三メートルもあるかないかのところに、太いケーブルとそれがつながる白い箱が置いてあった。
私はすぐさま後ろのレーザーカッターに手を伸ばすと、発射口をケーブルに向けた。
電源を入れ、トリガーを引く。
しかし、レーザーは出なかった。
先ほど受けた背中の衝撃を思い出す。
きっと、あれで機械が壊れたのだ。
それが分かった瞬間、私の中を絶望が埋め尽くした。
本当に、これ以上は方法がない。もう、どうしようもない。
……本当に?
私は、必死に考えた。こうなっても、まだ逃げる道はないのか。ひたすらに考えた。
「……できるかどうかはわからないけど、やるしかないよね」
不可能に近いが、一つだけ、方法はあった。
私は白い箱まで這って進むと、そこから多い箱をよじ登り、右手で体を支え左手でキーボードをいじった。
「アクセスしてください……」
画面に青い背景で、そんな白い文字が映し出される。
昨日、無理矢理身に着けた技術で、私はその暗号を解いていく。
残り時間、二秒。
「アクセスされました。全ての電源回路を遮断します。Y/N」
残り一秒で、私は「Y」を押した。
その瞬間。
後ろで乾いた音がしたと同時に、私は、とん、と背中が強くたたかれたような、そんな感じの衝撃を受けた。
背中から、熱い何かが入り込んでくる感覚がある。
それはすぐさま、焼かれたような痛みに変わり、私の意識はその痛みに刈り取られた。
最後、画面には「全ての電源が遮断されました。一秒後には全てのコンピューターの動作が停止し、シャットダウンされます」と、映し出されていた。




