<Ⅸ>
やっと銃声がやんだ。
あたりの床はすべて、赤黒い液体で覆われていて、そしてそれを覆い隠すほどの量の肉塊と金属塊とが、そこら中にぶちまけられていた。
そして、その中にもまだ、まともに動くロボットは残っていた。
そしてこっちは、動けるものが私だけ。
……もう、どうなるのかは分かりきっていた。
私はさっきから感覚がない左足を抑える手を、ゆっくりと自分の胸の前にもっていった。
「お待たせ、結衣、お母さん、お父さん……」
弟の名前を、祖父の名前を、祖母の名前を、私が知っている名前のすべてを、読み上げていく。
「ごめんね、アネモネちゃん。ごめん、蛍。私、ここまで頑張ったから……」
知っている名前をすべて読み上げると、私は自分の頬を暖かい液体が伝っていることに気が付いた。
ゆっくりと、死体を乗り越えて数台のロボットが近づいてくるのが、音でわかる。
私はぎゅっと目をつぶると、両手を胸の前で強く握った。
数台のロボットが、私を囲む。
そして、それらはゆっくりと、彼らの腕に持つ名前も知らない大きな銃を、私の体へ向けた。
次の瞬間が来るのが怖くて、さらに両手に力を籠める。
そして、ぱんっと、乾いた音が三つ、同時に響いた。




