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AR  作者: 青柳藜
chapter Ten Anchor.
81/147

<Ⅴ>

「分岐地点だ! A班は中央制御室へ、B班は地下核融合炉へ急げ!」

 前後から響く銃声に交じり、前のほうからそんな声が飛んできた。

 ここからは、もう電磁波板は使えない。ここから先は、電磁波板が廊下の大きさよりも大きくなってしまっているのだ。

「一つだけ、言っておくことがある」

 私が、レーザーカッターを背負いなおすと、隣で蛍がそうつぶやいた。

 私は黙って蛍を見つめる。

 いつもの蛍とは違い、人ではない、何か別の、神様のような雰囲気を、蛍は静かに醸し出していた。

「チャンスは、たぶん多くても十秒だ。それ以上だったら、アネモネがMIDORIを抑えていられる確証はない」

 蛍は、静かにこう告げた。

「分かってるよ。まぁ、もっと長いと思ってたけど」

 実は私も、そんんことぐらいは簡単に想像がついていた。

 いくら蛍が天才だとはいえ、このMIDORIを作ったほうも天才だ。それだったら、慣れているハードを使うよりも、慣れていないハードを使うほうが弱くなるのは簡単に想像できる。

「……今更どうにもならんが、お前って足は速いよな?」

 蛍が、私に恐る恐る聞いてくる。

 知らない間に、蛍の纏う空気は、いつものものに戻っていた。

「……天才ハッカーなのに、そんな情報も盗まずに私を『しょくぶつえん』に入れたの?」

 私が笑いながら言うと、蛍は「ぐ……」と言って下を向いてしまった。

 遠くから、後三十秒で分離するぞ! と指令が飛んできた。

「……とにかく、俺は出発から四分ジャストで、アネモネを送りだす。合わせろよ?」

 蛍は、もう一度、真剣な雰囲気を醸し出していた。

「大丈夫。だって……」

 分離! と、号令がかかる。


「私、リレーでアンカーを任されるぐらいの実力は持ってるから」


 別れ際、私は蛍にそう告げた。

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