<ⅩⅡ>
現在に戻ります。
「……なつかしいねぇ。そんなこともあったなーって感じだね」
カエデは僕の話にそう返してくれた。
「…ほんとに。もし蛍さんがいなかったらって考えると、ぞっとするね」
僕がそう言うと、カエデは笑って返した。
蛍さんは、僕らに『全て』を与えてくれた。
居場所、職業、そして、名前を。
僕ら二人の時は、別に名前は必要なかった。
二人なら、「私」と「あなた」があれば十分なのだ。
でも、人間は「群れる」。
名前があることは、すなわち「仲間がいる」事だ。
その仲間――家族を、あの人はくれたのだ。
「……今夜は星がきれいだな」
僕はカエデに言う。
星の明かりに照らされて、カエデの横顔がすごくきれいに思えた。
「…そうね」
「そう言えば、初めてじゃないか? こんな感じで二人で星を眺めるの」
僕が言うと、カエデは確かに、と言って笑った。
僕も、一緒になって笑った。
世界が滅びかけていることなんて、忘れてしまうぐらい僕らは笑った。
「僕、まだ、意味のわからない言葉があるんだ」
さんざん笑った後、僕らは仰向けに寝転がっていた。
「へぇ…。どんな?」
カエデが聞く。
「以前、蛍さんが言ってたんだよ。『完全は厭だ』って」
「う〜ん、どういう意味だろうね? 何でもできたら、みんなのあこがれになれるし、女の子にももてるよ?」
「……その言葉、いじめ? 僕、蛍さんに『おまえは会話が下手だから交渉術を身につけろ』って言われた張本人なんだけど?」
「あはは。違うって」
僕がわざと膨れると、カエデは笑って否定した。
「でも、本当にどういう意味なんだろうねぇ…」
「天才にしか分からない悩みなのかもな」
僕らは星空の下、いつまでもおしゃべりを続けていた。
やっとC9終わりましたぁ~!!
次の章からは、いよいよ作戦が動き出す予定です。
お楽しみに!




