<ⅩⅠ>
撃ったと同時に、僕は後ろへ倒れた。
そして、男たち二人も、頭が消し飛び、体が力なく地面に横たわった。
撃った弾は、すごい音を立てて、壁へめり込んでいた。
「……てめぇ!! よくもお頭を!」
残った男が一人、叫び声をあげながら狂ったように彼女へ襲いかかる。
でも、それもかなわなかった。
男は上城蛍に足をすくわれ、持っていた自分の拳銃を彼に奪われた。
上城蛍は男に馬乗りになると、奪い取った拳銃を相手の後頭部へ突き付け、問答無用で引き金を引いた。
乾いた音が部屋に響き、空薬莢が地面に落ちる金属質な音がこだまする。
蛍は男が動かなくなったのを確認すると、拳銃を置き、ゆっくりと立ち上がった。
返り血を浴びた彼は、まるで悪魔の様だった。
「あっ…」
彼女がはっとして、辺りを見渡す。
「ほら、早く檻を全部開けろ」
上城蛍はそう言うと、その場にうずくまった。
すすり泣きの声が聞こえる。
僕は、何故かその姿を見てはいけないような気がして、慌てて眼を逸らした。
無言で、鍵を壊していく。
檻から出てきた少女たちは、わらわらと階段を上り、外へ出ていく。
そして、ついにこの地下室に、僕と彼女、そして上城蛍の三人しかいなくなった時、上城蛍はこう言った。
「……約束、覚えてるか?」
その時の彼は、僕らと同じ、子供のような雰囲気をまとっていた。
「…あぁ」
もちろんだ。僕はこう見えて、結構もの覚えがいいのだ。
「じゃぁ、命令な」
蛍は立ち上がりながらそう言うと、僕らを指差して、こう言った。
「おまえら、今日から俺の家族な」
……その言葉の意味が、はじめは分からなかった。
僕や彼女のような、社会から邪魔者、商品としてしか見られないような僕らが、他人の家族になっていいものなのか。
それに――。
それに、この人は普通の人じゃない。多分、「天才」って奴だ。
僕らとあまり年齢が変わらないように見える上城蛍の体からは、様々な雰囲気が漂う。
ときには悪魔、時には大人、そして、今のような、子供のような雰囲気まで。
そんな、社会に必要とされるような存在である人が、社会に邪険にされる僕らと一緒にいて――
「おまえらは、俺にとって必要なんだ。だから、家族になろうって言ってる」
その言葉で、僕はまた、温かい液体が頬を伝わったのが解った。
こんな僕でも、誰かに必要とされている。そんなこと、ただのおとぎ話だと思っていたけれど。
実際にここにあるじゃないか。馬鹿なんじゃないのか? 僕は。いや、馬鹿か。
僕は、無言でうなずいた。
しゃべると、大声で泣いてしまいそうだったから。
その様子を、上城蛍と彼女はただ見つめていた。
「よーし! じゃぁ、今日から俺のことは『蛍』って下の名前で呼ぶこと。ちなみにおまえは『スギ』でおまえは『カエデ』な?」
「な…!」
僕らを指しながら、上――蛍は言う。
「それじゃ、今日からよろしくね? 『スギ』」
『カエデ』が僕に手を出してくる。
「助けてくれて…ありがとう!!」
僕が手を握り返すと、カエデは満面の笑みでそう告げた。




