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「ここか?」
僕がそう言うと、上城蛍は無言でうなずいた。
そこは、大手通販会社の倉庫だった。
その裏口の扉の鍵を上城蛍は自分の銃で打ち抜くと、扉は内向きに開いた。
奥には地下へ続く階段があった。
それを、上城蛍、僕の順番で静かに下っていく。
いた。
階段を下りきってすぐの所に男が座り込んでいびきを掻いていた。
一応銃を抱えているが、ロックすら外していない。
上城蛍は近くに転がっていた金属片を手に取ると、男の後頭部へ突き立てた。
その様子に、僕はあっけにとられていたが、上城蛍は別に何事も無かったかのよう男が抱えていた銃を拾い、先に進み始めた。
上城蛍は人間じゃない。僕はそう思った。
「言ったよな? 覚悟しろって」
僕の様子に気が付いて、上城蛍は言う。
覚悟――それは自分の危険ではない、人へ危害を加えることに対しての「覚悟」だったのだ。
僕は肉塊と化したそれを横目に、上城蛍の後についていった。
しばらく進むと、開けた部屋に出た。
そこには、たくさんの檻が並ぶ、刑務所のようなところだったが、中に入っているのは犯罪者ではなく、いろいろな年の女の子たちだった。
耐えられず、僕は叫ぶ。
「おーい!! 僕だ――」
「アホが!!」
僕の口を慌てて上城蛍がふさぐ。
複数人の足音が聞こえて来て、僕は事態の大きさに気が付いた。
「おまえが叫んだせいで、めんどくさいことになっただろうが! 仕事増やしあがって!!」
上城蛍はそう言うと、先ほど拾った銃を足音のする方へと向けた。
「おまえは早く檻を全部開けろ! おまえがピッキング道具持ってることぐらい知ってんだ!」
上城蛍のその言葉に、僕は上城蛍に背中を向けて檻へ走り出した。
ポケットからピッキング道具を取り出し、檻の南京錠を開けていく。
後ろから銃声がするが、僕は自分の仕事に集中する。
「いやぁ!!」
僕が開けていた檻とは違う場所から、僕の聞きなれた声が聞こえる。
その方を向くと、男が彼女のこめかみに拳銃をあてがったところだった。
男の後ろにはもう二人の男がいる。
「おいガキども。おまえが狙ってんのはこいつだろ?」
それを下せ、彼女を拘束する男は上城蛍にそう言った。
上城蛍は舌打ちをして銃を相手側に放った。
「そっちのガキも一緒だ。両手を組んで手を後ろに回せ」
男の汚らしい笑みに、激しい怒りを感じながらも、僕は『ハンカチ』を手に持って両手を組んだ。
もちろん、相手の方からは見えないようにだ。
男は唾を吐くと、彼女を開放して拳銃を下げた。
僕は、それを見逃さなかった。
ハンカチについていた赤いボタンを押し、銃を展開する。
突然現れた銃に、男はすぐに反応し、再び彼女を捉えようとするが、それを上城蛍が男の腕を蹴り飛ばして拒む。
男が持ていた銃は宙を舞い、男から離れた。
他の二人が慌てて銃を取り出すが、時すでに遅し。
僕は男の額に照準を合わせる。
弾はこれ一発。これで他の男二人も制止しなければならないのだ。
最低でも、三人中二人は殺さなければ、あとあと抑えられる気がしない。
途端に、時間がゆっくりと流れるように感じた。
意識が指先に集中する。
そして、男二人の頭が重なったその刹那、僕は引き金を引いた。




