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AR  作者: 青柳藜
chapter Nine Encounters of boys.
67/147

<Ⅲ>

「……おかえりなさい」

 僕が手ぶらで橋の下へ帰ると、僕と一緒に生活をしている少女はそう言って僕を迎えてくれた。

「……ごめん。ミスった」

 僕がそう言うと、少女はほんの少しだけ、悲しそうな顔をした。

「途中までは上手くいったんだ。でも、逃げるときに人にぶつかってさ…」

「……そう。残念だったわね」

 少女は慰めてくれるが、僕の心はいやされなかった。

「…僕たち、なんでこんなところで――」

 寝ころびつつ僕がそう言いかけると、頭の方で足音が聞こえた。

 飛び起きて音のした方を見ると、そこには先ほどぶつかった人物が立っていた。

 僕と大して変わらないぐらいの年齢の少年だと思うが、その人物の纏っている空気は、非常に大人びているものがあった。

「てめぇ…!」

 僕はそいつの胸倉をつかんだ。

 にもかかわらず、その少年の表情に変化はなかった。

「さっきはよくもやってくれたなぁ! お前さえあそこにいなければ、今日も飯を抜かずに済んだんだ!」

 僕は胸倉をつかみつつ、そう言う。

 すると、少年は静かに、こう言った。

「……金に困っているのか?」

 非常に大人びたような、でも、何か足りない、そんな感じの声だった。

「あぁ。みりゃわかんだろ!? でなけりゃこんなところに住んでねえよ。分かったならたったと金置いて消えろ!」

 後ろで少女が怖じ気づいているのが解った。

 …でも、こうでもしなきゃ、僕らは生きていけないのだ。

「……金をやる代わりに、一つ、質問に答えてほしい」

「はぁ? 何ほざいてんだ? たったと――」

「いいから質問を聞け」

 僕が言い返すと、少年はそう言って僕の手を振りほどいた。

 僕が尻もちをついて驚いていると、少年は何でもない風なそぶりで、こう言った。

「…おまえは、神を信じるか?」

「……は?」

 僕は質問の意味が解らなかった。

 神? 神って神様のことか?

「……そんなもん、いるわけねえだろ」

「…なぜ?」

 少年はそう聞き返す。

 なぜだって? だって…。

「…だって、もしそんな奴がいたんなら、俺たちこんな目に遭ってねえだろ?」

 少年の視線から目をそらしつつ、僕はそう言う。

「……でも、神がわざとそうしているのかもしれないぞ?」

 少年は言う。

「…もしそうなんだったら、そいつは神じゃなくて悪魔だ」

 その言葉に、僕はぶっきらぼうにそう答えた。

 すると、少年は少し感動したそぶりを見せ、こう言った。

「……素晴らしい」

「……は?」

 なにが?

「おまえの考えは素晴らしい。『友達』になってくれないか?」

「………は?」

 いきなりどうした? ていうか、こいつ何いってんの?

「俺は上城蛍。職業はハッカーだ」

 少年――上城蛍はそう言って、右手を出してきた。

 しかし、僕はその手をはねのけて置き上がった。

「ふざけるな。金を置いてどっかヘ行け」

 僕はそう言うと、晩飯を盗みに街へと歩き始めた。

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