<Ⅲ>
「すごい、上城君。また百点!」
担任のその声とともに、クラスからはおお~と歓声が上がった。
六時間目。「算数」の授業で、昨日やった「難問に挑戦!」という題名のテストの返却を行った。もちろん、俺からしてみては難問でもなんでもなく、ただただ、いつも通り速攻で解いて眠りについたわけだが。
俺は無言で、「2-1 上城蛍」の横に大きく「100 Very good」と書かれた紙を受けっとった。
担任は俺が喜ばない理由がわからないようで困惑していたが、前の担任からでも聞いたのだろう。特に咎めずに流した。俺としてもそのほうが断然楽だし、嬉しい限りだ。
「かみしろくんって、どうしてそんなにあたまいいの?」
一番後ろの、一番窓側から一個横の自分の席に戻り、爆睡する体勢に入ったところで、横からそんな声が聞こえてくる。
もちろん、無視して寝る。
「ねぇ、きいてる~? そんな毎日ねてばっかりで、楽しいこととかないの?」
……肩をゆすって全力で邪魔してきた。
「……別に普通だろ? このぐらい」
だめだ。こいつだけには逆らえない。
俺は寝る体勢を崩して椅子に座りなおすと、頬杖をついて横を向く。
やはり、と言うべきか、案の定、椿が膨れてこちらを見ていた。
雪のように白い肌と、真っ白な肌、それに赤い瞳。
これだけを聞くと、いかにも絶世の美女を想像するかもしれない。しかし、こいつはそんなのでは決してない。いや、確かにものすごくかわいいのは認めるが、内面は最悪だ。わがままだし、すぐ泣くし、機嫌を損ねると面倒だし。
「ふつうじゃないよ! ふつうだったらじゅぎょう中ねてっばかりで100点なんか取れるわけないよ!」
「はいそこ。授業中は静かにね」
椿が大声を出したのを、担任が止める。
すみません、と椿が言うと、担任はあきれたよな顔をして、
「それにいくら呼んでもテストを取りに来ないんじゃ、お母さんに直接渡しちゃいますよ?」
と言った。
その言葉で、椿は大慌てで先生の所へ行き、そしてテストを受け取った。
途端に、彼女の顔が引きつる。
「これでもう3回目よ? 一桁台」
先生が今度は本当にあきれながら言うと、周りのクラスメイト達は大笑いする。
それにつられるようにして、椿も「ははっ……」と照れ笑いをする。
テストが返されるたびに繰り返されるその光景に、俺はため息をつき、即寝した。
一つ、先ほど言い忘れていたことがあった。
椿は、救いようのない馬鹿だ。




