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<Ⅱ>
ここから、蛍サイドで話が進みます。
「……はぁ」
缶コーヒーを飲みながら、俺はため息をついた。
缶コーヒーは、ここに来る途中で自販機をぶっ壊して中身をかっぱらったものだ。
とは言っても、金は置いてきたからかっぱらったわけではないか。
俺は、外に出ていた。
普段地下室に引きこもっているから部屋の中の空気には慣れているはずなのに、無性に外の空気が吸いたくなったのだ。
「…………」
……静かだ。
近頃、といってももう4年はたつが、少なくとも一人はそばにいてくれるからか、俺は静けさに不慣れになっていたようだ。
……いや、それ以前もそうか。
俺の人生は、うるさいことこの上なかった。
濁流のような「運命」に溺れないように、必死にあがいていた小さかったころの俺は、静けさを知らなかった。
「……はぁ」
またため息がこぼれる。
そういえば、一度だけ、こんなに静かだった時期があった事を思い出した。
今となっては、もうどうでもいい記憶の渦に、俺は呑みこまれてゆくような感じがした。




