<Ⅰ>
ここから新しい章です。
「そんじゃ、最終確認だ」
作戦決行が二日後に迫った日、蛍はみんなに向けてこう言った。
「まず、俺がアネモネの入ったメモリーディスクを持って、そんで明香がこのレーザーカッター持って、MIDORIの研究所から侵入する」
蛍はそう言って、右に置いてあるレーザーカッターを指差す。
どう見たって、巨大な鉄の箱だ。
あれをか弱い女の子に背負わせるとか、男としては最低だ。
蛍曰く、その鉄の箱を使う仕事の方が安全らしいから、別に文句を言いたいわけではないが。
それに、この仕事に関りたいと言いだしたのは自分だ。だから、頼まれた仕事はちゃんとする。
「そんで、警察の機動隊とあと自衛隊の保護を受けつつ建物内を歩く。ほんで、途中で俺と明香が分離、俺は制御室の方へ、そんで明香は核融合炉の方へ行く。で、最後に俺がメモリーを突っ込んで、MIDORIの防御システムをアネモネが破壊したら、明香がコードをレ―ザ―カッターでぶったぎる。ほんで、ソフトができたら、アネモネをMIDORIから出す。あとは、焼くなり煮るなり、警察の好きにする。そういう感じだ」
蛍は一息にそういうと、何か質問は? と聞いてきた。
「どういう方法で前に進むわけ? 相手はAI制御のロボットだって持ってるんだよ?」
アヤメちゃんがそういう。
確かに、それで犠牲者が出てしまっては、元も子もない。
この作戦は、犠牲者ゼロが目標なのだ。
「方法か? それなら、こいつに一任している」
蛍はそう言って、鈴木の方を指差した。
指差された鈴木は、ゆっくりと立ち上がると、こう言い放った。
「電磁波で相手のマイコンを破壊しつつ進む。所詮相手はロボットだ。制御形態がやられれば、後に残るのはただの箱だ。」
「電磁波は、人間にも被害が及ぶし、メモリーディスクが死んじゃうんじゃないんですか…?」
そう発言したのは、タンポポくんだった。
そういえば、会ってからこの子が口を開くのを見たことがなかった事に、今更ながら気が付いた。
「その点は問題ない。電磁波の向きを制御できるようにしているからな。人間の方に向けなければ、それで終わりだ」
鈴木はそう言って不敵に笑った。
それなら、確かに問題はなさそうだ。私達はもう手を挙げることはなかった。
「…ほんじゃ、作戦開始は明後日の10:00だ。今日は夜遅いから、もう寝よう」
解散、と言って、蛍は部屋から出ていった。
他の人たちも、わらわらと部屋を出ていく。
「……アネモネちゃん」
部屋から出ていこうとしていたアネモネちゃんを、私は呼びとめた。
「……なんですか?」
彼女の顔には、うっすらと不安の表情が出ていた。
だから、私はそのことを指摘しないように、決行前最後のお願いをした。
「教えてほしいことがあるの」




