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AR  作者: 青柳藜
chapter Seven Past mistakes.
48/147

<Ⅲ>

 そのあとは、ただただ後片付けがされるだけだった。

 政府がらみの実験だったため、事件のことは一切公にされず、だれも責任はとらなかった。

 そりゃそうだ。「なかった」事件の責任など、とる方法がない。

ただ、僕の周りの環境は異常なスピードで変わっていった。

 リセクティエスタが失踪し、そして翆が死んだ。

 他人の恋人を奪った罰だと、僕はその事実をただ受けとめた。

 葬式の時も、泣けなかった。

 ただ、花を添えるときに指が翆の顔に触れてしまった時の感触は、よく覚えている。

 非常に冷たく、かたい感触。

 まるで、僕の心を表しているかのようだった。

 どこまでも冷たい心。

 人間性のかけらも無い。

 無機質な僕の心は、どうやら感情というものを忘れてしまったようだった。

 あるのは、ただ論理的に思考を繰り返す脳のみ。

 こんな僕を見たら、きっと翆は悲しむだろうか? それとも恐怖するだろうか?

 ……まぁ、そんな時には嘘をついてしまうんだろうけれど。


 月日は流れ、明子さんから理性を学んだ、いや、感情を学んだAIは、ついに政府機関に組み込まれることとなった。

「こいつの名前、どうします? 所長」

 新しい秘書が聞いてくる。

 そういえば、名前を付けていなかった事を思い出した。

「『MIDORI』で、どうだ?」

 僕は、今でもなぜ彼女の名前をAIの名前にしたのかは分からないが、恐らくは、自分への戒めだったのだろう。


 五年前のことを忘れるな、という自分への戒めだ。


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