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AR  作者: 青柳藜
chapter Five Tragedy five years ago.
35/147

<Ⅲ>

 翆が病気を一気に悪化させたのは、ひな祭りの一週間後の、三月十日だった。

 その知らせを受けた時、僕は研究室でリセクティエスタとAIの最終的な構造について話し合っている最中だった。

「所長、お電話です」

 明子さんが電話を僕につなげる。

「もしもし、河内です」

 電話をとり、受話器にそう話しかける。

 相手は、翆が入院している病院からだった。

「翆さんが危険な状態です」

 受話器からそう聞こえた瞬間、僕は研究室を飛び出していた。

「河内!?」

 後ろからリセクティエスタの声が聞こえたような気がするが、僕はそれに返事をする余裕すらなかった。

 急いでタクシーに乗り、病院へ向かう。

 タクシーに万札を置き、僕は病院の受付へ走る。

「すみません! 河内です! 翆は!?」

 受付の人は一瞬戸惑いの表情を浮かべたが、翆の名前を聞くと、すぐに場所を教えてくれた。

 教えてくれた場所へ、僕は一目散にかけて行く。

 到着した場所は、応急処置室の前だった。

 処置中の赤いランプが光っている。

 僕は、その前で祈るような感じで、ドアが開くのを待ち続けた。

 それから、どれだけ時間が経ったかわからないが、非常に長かったように感じる。

 処置室のランプが消え、担当の先生が出てきて、僕はその先生に診察室へ連れて行かれた。


 そこで、僕は、先生にいろいろなことを告げられた。

 翆はまだ意識を取り戻していないが、応急処置は成功したこと。

 翆の病を、治す方法が未だ見つかっていないこと。


 そして、翆の命が、あと半年続くかどうかも分からないこと。

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