<Ⅲ>
翆が病気を一気に悪化させたのは、ひな祭りの一週間後の、三月十日だった。
その知らせを受けた時、僕は研究室でリセクティエスタとAIの最終的な構造について話し合っている最中だった。
「所長、お電話です」
明子さんが電話を僕につなげる。
「もしもし、河内です」
電話をとり、受話器にそう話しかける。
相手は、翆が入院している病院からだった。
「翆さんが危険な状態です」
受話器からそう聞こえた瞬間、僕は研究室を飛び出していた。
「河内!?」
後ろからリセクティエスタの声が聞こえたような気がするが、僕はそれに返事をする余裕すらなかった。
急いでタクシーに乗り、病院へ向かう。
タクシーに万札を置き、僕は病院の受付へ走る。
「すみません! 河内です! 翆は!?」
受付の人は一瞬戸惑いの表情を浮かべたが、翆の名前を聞くと、すぐに場所を教えてくれた。
教えてくれた場所へ、僕は一目散にかけて行く。
到着した場所は、応急処置室の前だった。
処置中の赤いランプが光っている。
僕は、その前で祈るような感じで、ドアが開くのを待ち続けた。
それから、どれだけ時間が経ったかわからないが、非常に長かったように感じる。
処置室のランプが消え、担当の先生が出てきて、僕はその先生に診察室へ連れて行かれた。
そこで、僕は、先生にいろいろなことを告げられた。
翆はまだ意識を取り戻していないが、応急処置は成功したこと。
翆の病を、治す方法が未だ見つかっていないこと。
そして、翆の命が、あと半年続くかどうかも分からないこと。




