<Ⅵ>
「大丈夫ですか!? 死んでませんよね!?」
「……おまえが思いっきりおいかぶさってきたおかげで背中と後頭部を打っただけで済んだよ。ありがとな、畜生」
そう言い返してくる非常に不機嫌そうな顔を見て、私は安堵した。
しかし、その感情はすぐに緊張へと変わる。
なぜなら、いま、私は蛍に思いっきりだきつくような感じで、蛍を下にして寝転がっているのだ。私が蛍に抱きついて、その調子で蛍を押し倒してしまったかのようにも見えなくはない。
私は跳び起きると、自分の顔を隠す様な感じで蛍に背を向けた。蛍は、私が人間に近くなるように、わざわざ緊張すると顔が赤くなる機能まで「体」に搭載していた。
でも、眼前に広がる光景を目にしたら、そんな緊張はどうでもよくなってしまった。
後ろで、蛍がゆっくりと体を起こすのが分かる。
さっきまでは一つの街だった場所が、一瞬で廃墟と化してしまったのを見て、蛍はため息をついた。
「……冗談半分のつもりだったんだけどな。ミサイルの話」
「……こりゃぁもう本気で殺しに来てますね? まぁ、MIDORIの方もこれでまさか生き延びてるとは思わないでしょうから、大丈夫だと思いますよ?」
「……念のために衛星回路は切っておけ。この状況じゃぁ位置を特定される」
蛍の指示で、私は素早く衛星回路をシャットアップした。その時間、なんと0.0001秒。まあ、そこそこのはやさか。
私の前を、蛍が慎重に歩き出した。
私達がしょくぶつえんへと向かう途中、私はリアルタイムで私達の周辺半径100キロメートルの範囲を監視し続けていた。
すると、まぁ、ミサイルが飛んでくるのを見つけてしまったわけで。
左右の家の塀と爆心地の向きとかを瞬時に計算し、蛍を押し倒して難を逃れた、というわけだ。
……結局押し倒したことに変わりはないのだが、そんなことはどうでもいい。
MIDORIが狙ったのはついさっきまで私達がいた地下室だった。ということは、目標は私か、蛍。MIDORIがその気なのなら、早くしょくぶつえんに――
「うおぉっと!?」
……突然、蛍が私の目の前から姿を消した。
「えっ? ちょっ、蛍!?」
私が呼ぶと、傍にあった四角い穴から、がん、がんと金属を叩く音がした。
スカートを抑えて、私も飛び込む。
「蛍? 大丈夫ですかぁ?」
「俺は大丈夫だけど、とんでもないもん見つけちまった」
蛍が指をさした先には、白い腕が瓦礫の隙間から覗いていた。
生体反応は――ある。
「えっ!? ちょっ、この人生きてますよ!? 早く助けないと!」
「……まじ? こんなけ上に積み重なっててまだ生きてんの?」
「そうですよ! いいから手伝ってください!」
私はその人の上に乗っている鉄骨や棚をどけていった。
その人は、蛍と同じくらいの年の女の人だった。




