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AR  作者: 青柳藜
chapter Two The beginning day.
14/147

<Ⅴ>

「結衣!」

 私は結衣の家に上がり込んでいた。

 あの人たちが倒れたすぐ後、あちこちで悲鳴が上がって、町は一瞬で地獄絵図と化した。

 公衆電話もつながらないし、MP3プレイヤーについていたFMラジオ機能を立ち上げても、雑音が響くだけ。

 家族が心配になって家へ戻っている途中、私はあることに気が付いた。それは、異変が起こった人が全員、ARGCを付けているということだ。

 となってくると、少なくとも私の家族は問題がない。なぜなら、そことは一切無縁な環境にあるからだ。でも、結衣はARGCを持っているし、あのゲーマーだ。WMeをやっていた可能性がものすごく高い。ということで、私は結衣の家に特攻していたのだ。

 玄関で靴を脱ぎ、結衣の家に無断で上がり込む。

 家の奥の方にあるカウンター式の台所に、結衣の姿はあった。

「……」

 その姿を見て、私は言葉を失った。

 結衣のお母さんが力なく横たわっている横で、結衣は彼女の妹の桃ちゃんを抱きしめ、座り込んでいた。

「結衣…?」

 私は恐る恐る声をかける。

「……あ、明香?」

 結衣は動かず、かすれた声で私の名前を呼んでくる。

「ねぇ、お母さんが起きないの… ねえ、どうしよう、お母さんが起きないよ…?」

 こちらに振り向きながらそう言う結衣は、ただうつろな笑みを浮かべていた。

「……おねえちゃん?」

 状況を完全には把握しきれていないような桃ちゃんが、結衣に話しかける。

 結衣は桃ちゃんの顔をみて、

「だ、だいじょうぶ…。おかあさん、ちょっと寝てるだけだから…。すぐに目を覚ますから…」

 頭をなでながら、そう語りかける。

「結衣」

 うつろな笑みを浮かべる結衣に、私は話しかける。

「……」

 しかし、結衣は何も答えない。

 何も話さないのなら、しょうがない。私は桃ちゃんにも話しかけた。

「桃ちゃん、ご飯は食べた?」

 桃ちゃんはこの状況を理解できていない。出来るだけ、普通な感じの話題がいい、と思い、私は晩御飯の話をした。

 そう聞くと、桃ちゃんはフルフルと、首を横に振った。

「よぉーし、そういうことなら、私が何か作ってあげよう! 何がいい?」

 そう聞くと、桃ちゃんは目を輝かせて

「オムライス!」

と叫んだ。

「…よ、よぉーし、お、オムライスかぁ~。分かったよ! やってみるね!」

 家庭科の点数が毎回0点の私からしてみれば、地獄級に難しいが、やれるだけやってみよう。

 ……私の中であふれかえりそうになっている感情を隠しながら。

「それじゃ、結衣、地下の倉庫、入るよ」

「……うん」

 そう、力なく返事をする結衣を後目に、私は地下の倉庫へと足を踏み入れた。

 

…それが結衣を見る最後の時になるとも知らずに。


 私が地下の倉庫へ足を踏み入れた瞬間、背後から爆音と爆風が私を襲った。

ちょっと少ないですが、今日はここまでで。

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