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「MIDORIが再起動してしまいました」
レストランの中で、男の人――土田さんはそう言った。
「詳しいことは言えないのですが、それでいろいろと厄介なことが起こってしまいまして。その終息に、紫苑さん、あなたにも協力してもらおうかと」
土田さんの前にはコーヒーが、私の前には水が置かれている。男の人の貼り付けたような笑みに、私は悪寒がした。
「協力って、私は、まだ高校生ですし、何にもできません。そんな話は無理です。しょくぶつえんに仕事を依頼してほしいなら、土田さん自身でスギさんに言ってください」
何とか平生を装って、私は返す。しかし、私のその言葉を聞いても、土田さんの笑顔は崩れなかった。
「今回はあなた自身に協力してほしいのですよ。他の誰でもありません。あなたにしかできないことなのです」
いったい何の冗談だ。そう思って、私は窓の外を見た。窓の外では黒い雨粒が降り注いでいた。
「ただの高校生にでもできることなら、それこそもっといっぱい適任がいるでしょう? なぜ私でないとダメなんですか」
私の言葉に、土田さんは小さくため息をついた。
「本当は最重要機密なので、あまりしゃべりたくはなかったのですが……。紫苑さん、あなたは――」
雷が大きな声で泣いた。雨が窓を殴りつける音が、レストランの中に響き続けていた。
しかし、そんな音も唐突に私の耳に入ってこなくなった。あとには、真っ黒な暗闇に土田さんだけが映っていた。
「紫苑さん、あなたは人類の生贄にならなければいけないのです」




