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AR  作者: 青柳藜
capter Thirteen A small accident.
117/147

<ⅩⅠ>

MIDORI内のアネモネです。

 何もない、白い部屋だった。

 見渡す限り、白が覆いつくした世界。今自分が踏みしめているはずの地面も、分からないぐらいに白かった。そういえば、影がない。いったいどうしてだろうか。

 そう思っていると、私の下に影ができた。そして、私がいつも知っていた、あの暗い地下室、蛍が主に遊んでいた暗い地下室、そして、私が生まれたあの暗い地下室が、知らないうちに私の目の前にあった。

「蛍〜? どこへ行ったんですか〜?」

 いつの間にどこへ行ったのか、私は蛍を探したが、蛍は風呂場にも、倉庫にも、台所にもいなかった。

「まさか、そんなわけは……」

 私はそう思いながらも、一応家の外を確認することにした。めったに外に出ない蛍が、そとに出るわけないと思って。

「……え?」

 家の外に出ると、そこは、灰に変わった世界だった。

 後ろを振り向いても、そこは何かが落ちて爆発した後のような、大きな穴が開いているだけで、今さっきまで自分がいた地下室は、どこにもなかった。

「ほ、蛍……? いったいどこへ行ったんですか……?」

 私は目の前が真っ暗になったような気がして、私頭を覆って地面にしゃがみ込んだ。

 何か、大切なことを忘れているような気がした。でも、機械である私が、忘れることなどあるはずがない。では、記憶がブロックされていると考えた方がいいのだろうか? どっちにしろ、なにか、大切なことを忘れているようにしか、私には思えなかった。

「どうしたの? まだ、何も思い出せない?」

 目の前から突然そんな声がして、私は前を向いた。

 目の前に、全身から淡い緑の光を放つ少女が、悲しそうな顔をして立っていた。

「もう気付いているんでしょう?」

 目の前にいた少女がそう言うと、私の中に、記憶が流れ込んでくるような感触が走った。

 そして、私は、その記憶に、絶望した。

「あなたの探している人――あなたが『好き』だった人は、もうとっくに死んでいるの」

 緑の少女の言葉で、私の中の何かが、全て消えた。

 後に残ったのは、絶望から少しでも逃げたいと思う、そんなどうしようもない感情だった。

 誰もいない、灰に変わった世界で、私の絶望の叫び声だけが、むなしく響いた。

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